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藤村千賀名誉教授が瑞宝中綬章を受章されました

本学の名誉教授である藤村千賀先生が、平成26年春の叙勲において瑞宝中綬章を受章されました。

先生は、高知女子専門学校を昭和26年に卒業され、すぐに高知県保健所に入職、その後昭和37年から平成8年に定年退職されるまでの34年間、高知女子大学に奉職されました。当時、本学でただ一人の栄養士資格を持つ教員として長年にわたり栄養士養成の教育にご尽力され、現在の高知県立大学健康栄養学部管理栄養士養成課程の礎を築かれました。

研究業績としては、主に公衆栄養学の分野で貢献されました。すなわち、県民の食生活の実態調査や生活環境と食事と健康の関わりを分析し、改善指導を行われました。特に「高知県における二期作農家の食生活の実態について」栄養・罹患・疾病・経済・意欲など多方面から総合的に調査し判定、その判定結果に基づき、実生活に適した指導を行うことで栄養改善がなされることを実証されました。この功績により昭和41年に日本栄養改善学会賞を受賞されました。

また、成人病の低年齢化についての疫学調査から、小児期からの予防の重要性を早くから認識し訴えてこられました。これにより平成元年度厚生省「小児の成人病(生活習慣病)危険因子の実態把握に関する研究」の分担研究者に選ばれることとなり、分担研究と共に独自に尿分析による小児期の食塩摂取レベルに関する研究を推進されました。フィールドでの疫学調査及び因子分析を用いた研究により、小児の早朝尿中排泄食塩量から摂取量を推計する簡便な手法を編み出されました。これにより現場での食塩摂取量の評価が容易となり、広く応用が可能となりました。このような手法を用いながら、現在は一般によく知られている、小児からの減塩の必要性を早くから提唱し指導・普及されました。

これらの業績は、当時の日本人における公衆栄養学的・疫学的エビデンスの少ない中、非常に貴重な情報を提供してくれる資料として、幅広い実践面に活用されたことは想像に難くありません。今回の受章を契機に先生の業績を振り返ってみますと、ここ数十年間のわが国における脳卒中死亡率の低下には、狭義の医療より藤村先生のような地道な調査研究とそれに基づいた栄養改善活動の寄与が大きかったと改めて認識させられます。このような社会的功績により、今回の瑞宝中綬章という形で評価されたと思われますが、わが国において予防の重要性の評価が比較的低いためか、このような大きな功績はもっと早く評価して欲しかったとさえ思われます。いずれにしましても本学にとって、先生の受章は誇らしく、喜ばしいことでした。と同時に現役の教員としましては、このような先人の地道な研究活動を手本に大学人としての歩を見直さなければ、と身の引き締まる思いもいたした次第です。すなわち、研究当初手回し計算機しかなかった先生の時代に比べ、我々の研究環境は良くなりました。それに見合うだけの貢献をしているのかと、自らに問いかけしていく所存です。

なお、藤村千賀・巌ご夫妻を招いての叙勲のお祝いの会が9月7日(日)城西館で行われました。祝賀会当日は、南裕子学長の発起人代表挨拶や第1回の卒論生荻野寿美子さんのお祝辞、そして大勢の卒業生らを前に先生は胸がいっぱいになられ、涙をこらえるのがやっとだったようです。参加された皆さんも、終始笑顔で学生時代にタイムスリップしたかのような温かな会でした。若い人にとっても先生の研究者としての姿勢や業績を知る良い機会となりました。

「藤村先生、いつまでもお元気で、私たちのお手本でいて下さい。」


  

祝賀会にて

 

6月12日受章のご挨拶に大学を訪問された際、学長応接室にて幹部教職員とともに

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