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ケア検討会

第1回「質の高いがん看護実践を検討する会」

平成30年度テーマ:がん患者の在宅療養を支える多職種連携と看護

【第1回】がん患者の在宅移行支援における困難事例
【日 時】平成30年6月23日(土)13:00~15:00
【場 所】共用棟2階講義室D220
【参加者】25名(看護職者20名、大学院生1名、教員4名)

第1回「質の高いがん看護実践を検討する会」は、高知県全域から20名の看護職の皆さんにご参加いただきました。今回は、立場が異なる参加者の「がん患者の在宅移行支援における困難」の多様性を考え、個々の体験をもとにグループディスカッションを行いました。
  • グループディスカッションの様子
  • グループディスカッションの様子1
  • グループディスカッションの様子
  • グループディスカッションの様子2
 はじめに、「がん患者の在宅移行支援における困難と困難の背景にある課題について話し合いました。
 続いて、高知県の現状を踏まえ、がん患者の在宅療養をめぐる社会情勢や在宅医療の現状、在宅移行支援の実際等について、高知県立大学看護学部助教の門田麻里先生より、ミニレクチャーがありました。
 その後、各グループで一つの課題に焦点を当て、在宅移行支援について話し合いを行い、グループ発表を行いました。「病院と在宅間での情報共有ができていない」ことに対して、担当部署にお任せせずに関連部署にとの連携を密に図ること、入院時から在宅の可能性を見据えて、本人、家族を含めた退院前カンファレンスを行い情報共有すること、在宅側からも病院側へ欲しい情報を求め、多職種と連携しながら支援していく必要があることについて、意見が出されました。また、「療養場所に関する医療者間の意見の相違」に対して、患者の在宅移行の機会を逃した経験を踏まえ、患者と家族のそれぞれの思いを聞くこと、多職種カンファレンスで医師の考えも共有し、入院時から患者個々のゴールを医療者間で設定し、介入していくことについて、意見が出されました。さらに、「療養場所に関する患者と家族の意向の相違」に対して、認知症のある患者の事例をもとに、なぜ、家族は帰りたいという患者の意向を受け入れられなかったのか、家族個々の本音を聴く機会を設けることや病気になる前の家族関係も含めてアセスメントする必要性、説明の場に患者本人が参加する必要性について、共有しました。最後に、「未告知の患者さんの在宅移行支援」ついて、意向の相違がある本人と家族に対して、それぞれの思いや意見を聞き、状況を見ながら本人に病状を伝えて在宅移行支援ができた事例をもとに、発表がありました。退院前訪問や試験外泊でできなかったことを外泊日誌で確認し、できるように支援していること、それをもとに多職種での退院前カンファレンスを実施していることなどについて、共有しました。
 ディスカッション内容の発表により、在宅移行支援における課題を共有することができました。そして、患者、家族、医療者それぞれの意向や思いを大切にし、カンファレンスを通じて多職種間で情報を共有しながら、同じ目標に向かい在宅移行支援に取り組む必要について、再認識することができました。
  • グループ発表の様子
  • グループ発表の様子1
  • グループ発表の様子
  • グループ発表の様子2
「質の高いがん看護実践を検討する会」では、明日からの看護に役立つ学びを得る機会だけでなく、相談し合える仲間づくりや日々の看護実践を振り返りモチベーションを高める機会としても活用されています。初めて参加される方や一人で参加される方も多いですが、小グループのディスカッションで打ち解けてよく会話が弾んでいます。病院、地域、様々な場でがん看護を実践している看護職の皆さん、日々取り組んでいる看護について語り、がん患者さんやご家族への看護について考えてみませんか?
今年度は、「がん患者の在宅療養を支える多職種連携と看護」を年間テーマに掲げ、3回の「質の高いがん看護実践を検討する会」を開催します。第2回は、平成30年9月29日(土)に「外来でのがん患者の療養支援における困難事例」について、検討します。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」

平成30年度テーマ:がん患者の在宅療養を支える多職種連携と看護

【第2回】外来でのがん患者の療養支援における困難事例
【日 時】平成30年9月29日(土)13:00~15:00
【参加者】17名(看護職者8名、大学院生6名、教員3名)

第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」では、高知県全域から8名の看護職の皆様にご参加いただきました。今回は模擬事例をもとに、「外来でのがん患者の療養支援における困難事例」について、患者の体験理解や意思決定支援、療養支援についてグループでディスカッションを行いました。今回の事例は、70代男性A氏、S状結腸がん 独居(近隣に息子が在住)。S状結腸切除術およびリンパ節郭清を行うが、翌年に肺と肝臓への転移を認め薬物療法を繰り返してきた。がんの進行と有害事象による苦痛が強くなっていきたため、薬物療法は中止せざるを得ないことを主治医より説明されたが、本人が治療継続を強く望んでいる。家族を含めたサポートも少なく、医療者も家族とは一度も会ったことがない状況の方です。
  • 第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」
  • 第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」
最初に、「A氏がどのような体験をしているか」ということについて話し合いました。そこでは、病気の受け入れの程度、A氏の生き方や価値観、A氏にとっての治療継続の意味、金銭的な負担の有無、病気による自己像の変化といった視点での意見が挙げられました。次に、「A氏の意思決定支援に向けた支援」について話し合いました。そこでは、A氏の病気や治療に対する理解状況の把握、息子への病気の説明の程度、家族以外のキーパーソンとなる人の有無、これからの過ごし方に対するA氏の希望、生活上の困りごとなどを確認していくことが必要であるという意見がだされました。そして、これまでA氏は自分のことは全て自分で決めてきた経緯があるため、必要な情報や選択肢を早めに提供し、A氏が考える時間を確保することと、医療者としてA氏の意思を最大限に尊重していく姿勢を保つ必要があるといった意見がだされました。最後に、「A氏の自宅での療養に対する支援」について話し合いました。A氏は独居であるため、生活の状況やADLに合わせて、利用できる制度やサービスを徐々に導入していくこと、これまで一人で頑張ってきたA氏をねぎらうこと、息子を含めたサポート資源の確保を行い、A氏が望む療養生活を送れるよう、人的・物的環境を整備していく必要性があること、そして、これからの方向性についてはA氏と多職種を交えて話し合っていくといった意見がだされました。
続いて、がん患者の治療・療養について、患者・家族と医療者が話し合うプロセスである、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について、高知県立大学看護学部助教の門田麻里よりミニレクチャーがありました。レクチャーの中で説明したACPに関する心構えや具体的方法、看護師の役割には、今回のディスカッションの中で挙がっていた内容がたくさん含まれており、参加された皆様は、日々のがん患者さんの意思決定支援および療養移行支援において部分的にACPを行っていることが分かりました。今後は、病院・在宅・施設等のそれぞれの場で意識してACPを行い、さらにはそれぞれの場で行われるACPのプロセスを確実につなぎ、地域全体で患者にとっての最善の医療・ケアの提供を目指すことが大切であるということを認識することができました。
  • 第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」
  • 第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」
 「質の高いがん看護実践を検討する会」では、明日からの看護に役立つ学びを得る機会だけでなく、相談し合える仲間づくりや日々の看護実践を振り返り、モチベーションを高める機会としても活用されています。継続して参加される方、初めて参加される方、お一人で参加される方など様々ですが、小グループのディスカッションで皆さんすぐに打ち解けて会話が弾んでいます。病院、地域、様々な場でがん看護を実践している看護職の皆様、日々取り組んでいる看護について語り、がん患者さんやご家族への看護について考えてみませんか。そして高知県内でがん看護実践を行う専門職者のネットワークを広げていきませんか。
 今年度は、「がん患者の在宅療養を支える多職種連携と看護」を年間テーマに掲げ、3回の「質の高いがん看護実践を検討する会」を開催します。第3回は、平成31年1月26日(土)13:00~15:00に、「在宅でのがん患者の療養支援における困難事例」について検討します。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第3回「質の高いがん看護実践を検討する会」

平成30年度テーマ:がん患者の在宅療養を支える多職種連携と看護

【第3回】がん患者の在宅移行支援における困難事例
【日 時】平成31年1月26日(土)13:00~15:00
【場 所】共用棟2階講義室D220
【参加者】13名(看護職者7名、大学院生3名、教員3名)

第3回「質の高いがん看護実践を検討する会」では、参加者それぞれの立場や施設におけるがん患者の在宅療養支援についての実際や困難事例を共有し、対応策を一緒に考えました。
  • 個人ワークの様子
  • 個人ワークの様子
  • 困難事例の発表の様子
  • 困難事例の発表の様子
はじめに、「在宅でのがん患者の療養支援―多職種連携に焦点をあてて―」として、在宅でのがん患者の療養支援について、多職種連携の必要性、困難や課題、看看連携などについて、教員からミニレクチャーを行いました。
次に、個人や施設ごとに、在宅でのがん患者の療養支援における多職種連携の困難事例についてまとめ、それぞれ発表を行いました。参加者が体験している困難として、複数の場で様々な支援を提供する職種間の情報共有ができていないことにより患者に不利益が生じること、家族の不安により患者の意思決定の機会を逃すこと、また、患者が希望している自宅退院の時機を逃してしまうことなどがあげられました。
続いて、参加者が抱えている困難に共通することとして、多職種との情報共有について、全体ディスカッションを行いました。病院内における情報共有については、電子カルテやサマリーの活用や退院前の自宅環境を確認し、多職種カンファレンスの機会をもつことなどがあげられました。また、在宅療養支援における病院と地域との連携について、ケアマネージャーを通じた情報共有や、訪問看護師と病棟看護師との振り返る機会をもつこと、同行訪問などの意見があげられました。改めて、病棟看護師が地域の専門職との関係を築くことや地域に出ていくことの重要性について、共有することができました。
そして、藤田佐和先生から、「家に帰ること」と「最期を家で迎えること」を別々に考える必要性や在宅療養に不安を抱える家族に対して訪問看護師がかかわる意味、看護師が医師との橋渡し役を担い連携を支援していくことの重要性が伝えられました。
  • 全体ディスカッションの様子
  • 全体ディスカッションの様子
  • 参加証明書の授与
  • 参加証明書の授与
最後に、今年度3回のすべての会に参加して頂いた6名の方に、藤田佐和先生より参加証明書が手渡されました。そして、「学び得た知識を臨床で活用することで体験を経験に変え、知識を知恵に変えてほしい」と参加者へメッセージが伝えられました。
本年度のアンケート結果から、参加者は、他施設の方々との意見交換により新たな気づきが得られ、また、日々の看護実践への自信やモチベーションが高められていることが分かりました。今後も、看護職の皆様のニーズに沿う「質の高いがん看護実践を検討する会」を企画し、継続していきたいと思います。来年度も多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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お問い合わせ: 藤田研究室 TEL&FAX 088-847-8704 e-mail fujita@cc.u-kochi.ac.jp
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