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ケア検討会

2019年度第1回「質の高いがん看護実践を検討する会」

2019年度テーマ:他領域と協働し、がん患者・家族を支える看護実践
【第1回】在宅で療養するがん患者・家族への看護に困難を感じた事例
【日 時】2019年6月15日(土)13:00~15:00
【場 所】共用棟2階講義室D220
【参加者】31名(看護職者22名、大学院生4名、教員5名)

 第1回「質の高いがん看護実践を検討する会」は、高知県全域から22名の方々にご参加いただきました。病院や訪問看護ステーション所属の看護職者だけでなく、歯科医師や歯科衛生士の方にも参加していただき、多職種で検討する機会になりました。
  • グループディスカッションの様子①
  • グループディスカッションの様子②

グループディスカッションの様子

 今回は、「家で過ごしたい」と意思表示し在宅で療養していたが、終末期になり様々な苦痛症状の増強によりADLが低下し、娘一人の介護では在宅療養の継続が困難になり入院となった池さんの事例を用いて、本人の思いを支える在宅療養支援についてディスカッションを行いました。
 まず、一人で池さんの介護を担う娘の体験について話し合いました。これまで人に頼らず、自立した生活を送ってきた母親が、日常生活行動においてすべて援助が必要な状態になり、母親像が変化していく辛さを体験しているのではないか、池さんの治療方針に対して意見が異なる弟との間で葛藤が生じているのではないか、などの意見があげられました。また、母親を自分が介護しなければならないというプレッシャーや孤独感、自宅で看てあげることができない罪悪感や辛さを体験しており、一方で、入院により母親の苦痛症状が緩和したことで安心感を得ている、など娘の立場で考えたことを共有しました。
 次に、「家でゆっくり過ごしたい」と緩和中心の治療を選択した池さんの思いを尊重するために、どのタイミングでどのような支援ができたか、という視点で話し合いました。推定予後半年となった時に、在宅での生活を継続してみていくことができる訪問看護につなぐことができたのではないか、デイサービスに通うことができなくなった経過を把握しているデイサービスの看護師がケアマネージャーや外来の看護師につなぐこともできるのではないか、という意見があげられました。また、娘が一人で抱え込まずに相談できるように、そして、介護している娘を認めてくれる存在として同性の支援者や、手術前から継続して口腔ケアに関わる歯科医師・歯科衛生士の必要性など、池さんと家族を皆で支える雰囲気も大切であるという発表がありました。
 続いて、池さんの「病院は嫌や、家に帰りたい」という思いを支えるために、今後、どのような支援ができるか、という視点で話し合いました。まず、池さんがどうして「帰りたい」のか、目的を明確にすることで池さんの思いに家族も向き合うことができるのではないか、今後の経過への不安を抱える娘に対して、池さんの病状や今後起こりうる症状などを伝え、在宅での生活のイメージをつくる必要性などの意見があげられました。また、他県にいる息子にも連絡をとり、池さんの病状や今の状況を伝え、サポートが得られるように調整すること、介護保険の区分変更やバックベッドの確保により本人・家族の意向の変化にも対応できる体制づくり、体調不良の娘への看護介入など、様々な視点から具体策について意見があげられました。
  • グループ発表の様子
  • グループ発表の様子
  • 小原先生からのフィードバック
  • 小原先生からのフィードバック
 「地域の専門職との協働による終末期がん患者・家族の在宅移行支援」について、今回の事例を踏まえたレクチャーがありました。その後、検討会に参加してくださった在宅看護学領域の小原弘子先生から、助言をいただきました。多側面の視点からディスカッションされていたことについてフィードバックされ、終末期のがん患者と家族の在宅療養を支えるために、余命半年と推定された時点で、経過の見通しをもつことができる医療者が訪問看護につないでほしいこと、地域包括支援センターにつなぐことで要支援の方でも支援してもらうことが可能であることなどが伝えられました。また、「家に帰るか帰らないか」という療養場所の決定をゴールにするのではなく、患者、家族が何をしたいか、どう過ごしたいかに焦点を当て、必要な支援を考えてほしいと伝えられました。参加者からは、「訪問看護師さんと一緒にディスカッションすることで制度についての知識が得られ、考える視点が広がった」、「他施設の方と話ができて勉強になった」などの声が聞かれました。また、在宅での口腔ケアや食事支援など、患者・家族に継続的に支援していくことを目指す歯科医師や歯科衛生士の方との交流を深める機会になりました。
 今年度は、「他領域と協働し、がん患者・家族を支える看護実践」を年間テーマに掲げ、3回の「質の高いがん看護実践を検討する会」を開催します。第2回は、2019年10月22日(火・祝)に「精神症状をもつがん患者・家族への看護に困難を感じた事例」について、検討します。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

2019年度第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」

2019年度テーマ:他領域と協働し、がん患者・家族を支える看護実践
【第2回】精神症状をもつがん患者・家族への看護に困難を感じた事例
【日 時】2019年10月22日(火・祝)13:00~15:00
【場 所】共用棟2階講義室D220
【参加者】30名(看護職者21名、大学院生4名、教員5名)

第2回「質の高いがん看護実践を検討する会」は、がん看護に携わる看護職の方々や精神看護、訪問看護を実践されている看護職の方々21名に参加していただきました
  • グループディスカッションの様子①
  • グループディスカッションの様子②

グループディスカッションの様子

今回は、がんの診断を受け治療目的に入院した後に離院し、抑うつ状態や希死念慮が認められ精神科病棟(閉鎖病棟)へ転科となったAさんの事例を提示していただき、ディスカッションを行いました。
まず、精神科に転科したAさんの様子から、どのタイミングでどのような関わりができたかについて、話し合いました。入院時の落ち着かなさに看護師が気づいたときに、スクリーニンすることグや気がかりなど話を聞くことができたのではないか、検査を受ける時などの外来の時点から、社会的背景からソーシャルワーカーと協働して介入ができたのではないか、外来での病状説明時に本人や家族の反応や受け止めを確認し、関わりができたのではないか、などの意見があげられました。また、自分から訴えのないAさんに対して、看護師側から一歩踏み込んで話を意図的に聴くことや、がんの診断・告知だけでなくこれまでのライフイベントが原因の可能性も考え、過去に遡って確認することも必要ではないかという発表がありました。
次に、不安や抑うつ症状、希死念慮があるAさんが、今後治療を継続する上でどのような支援ができるかについて、話し合いました。悪い知らせをAさんに伝える必要については、どこまでの情報を希望しているかを確認してAさんの準備性を高め、状態に応じて適切な言葉を選ぶ必要性や、安心できる家族と一緒に話を聞ける場を設けるなどの意見があげられました。また、Aさんが今後も治療を継続していくために、家族を支える人を見つけて介入していくことや、訪問看護やデイケアの導入、経済面への支援など、社会資源を活用してAさんの自宅での生活が安定するように働きかけることが必要ではないか、という発表がありました。
  • グループ発表の様子
  • グループ発表の様子
  • 瀧先生からのフィードバック
  • 瀧先生からのフィードバック
続いて、精神症状をもつがん患者のアセスメントと患者・家族への看護援助について、今回の事例を踏まえたレクチャーがありました。その後、検討会に参加してくださった精神看護学領域の瀧めぐみ先生から、助言をいただきました。様々な視点からディスカッションされ、大切な看護が導かれていたことがフィードバックされました。また、Aさんの状況から、入院を契機にがん治療を受けるという現実性が増して離院行動に至った可能性があることや、抑うつ症状のある患者さんの特徴について、視野が狭くなり今後の見通しをもつことができず、悲観的になりやすい状況にあるため、状況に応じて肯定的な見通しを伝えていくことも大切になることが伝えられました。
今年度は、「他領域と協働し、がん患者・家族を支える看護実践」を年間テーマに掲げ、3回の「質の高いがん看護実践を検討する会」を開催しています。第3回は、2020年2月15日(土)に、「認知症の高齢がん患者・家族への看護に困難を感じた事例」について、検討します。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

2019年度第3回「質の高いがん看護実践を検討する会」

2019年度テーマ:他領域と協働し、がん患者・家族を支える看護実践
【第3回】認知症の高齢がん患者・家族への看護に困難を感じた事例
【日 時】2020年2月15日(土)13:00~15:00
【場 所】共用棟2階講義室D220
【参加者】25名(看護職者17名、大学院生4名、教員4名)

第3回「質の高いがん看護実践を検討する会」は、がん看護や精神看護に携わる看護職、在宅療養を支える訪問看護師、歯科医師や歯科衛生士などの多職種17名の方々に参加していただきました。
  • グループディスカッションの様子①
  • グループディスカッションの様子②

グループディスカッションの様子

今回は、膀胱がんの進行に伴う疼痛の増強により、疼痛緩和目的で入院となったが、重度の認知症があり痛みを表現することが難しいAさんの事例について、ディスカッションを行いました。
1つ目に、Aさんは、どんな痛みを体験しているかについて、話し合いました。Aさんの身体的痛みは、がんに伴う痛みや浮腫に伴う痛みの他、ADL低下や安静に伴う筋肉や関節の痛みなど、がんに伴う痛みだけでなく高齢者の視点から意見があげられました。また、Aさんの立場に立ち、痛みやADL低下で何もできなくなった辛さや何をされるか分からない不安・恐怖、入院に伴う孤独感を体験している可能性があり、身体的な痛みと相互に影響し、スピリチュアルペインも体験しているのではないかという意見があげられました。
2つ目に、Aさんの痛みを正確にアセスメントするために、どんな情報をどのように得たらよいかについて、話し合いました。痛みを訴えることができないAさんの痛みに看護師が気づくことができるように、安静や体動時の表情をよく観察し、アビースケールなどの指標を用いて薬剤の効果を評価すること、Aさんがイライラする原因を探るなどの発表がありました。また、友人や家族、施設の方から、今までの生活スタイルを聞き、痛みによる食事への影響、不快につながりやすい排便状況など、生活の視点でアセスメントすることや精神症状の変化を丁寧に観察する必要性を共有しました。
3つ目に、痛みを訴えるAさんに対して、どのような援助ができるかについて、話し合いました。疼痛アセスメントに基づく鎮痛剤の調整やポジショニング、下肢浮腫に対するフットケアやマッサージなど疼痛緩和を目指した援助、また、食事や排泄のケアなど生活調整に働きかける援助について、意見があげられました。さらに、目線をあわせたコミュニケーションやタッチング、以前に嗜んでいたお花など安心や心地よさを支える援助が、特に認知症のAさんにとっては重要になり、音楽療法や気分転換と同様に疼痛閾値を高め、全人的苦痛の緩和につながることを共有することができました。
  • グループ発表の様子
  • グループ発表の様子
  • 塩見先生からのフィードバック
  • 塩見先生からのフィードバック
そして、検討会に参加してくださった老人看護学領域の塩見理香先生から、豊富な知識をもとに丁寧に考えられていることがフィードバックされ、BPSDの背景には患者さんの困りごとがあり、そこに耳を傾けることが大切であることが伝えられました。また、認知症のがん患者さんにおいては、痛みだけでなくその人の生活も含めて全体を見ていくが大切になり、特に身体的苦痛に伴う多くの「不快」を体験しているため、その患者さんの「快」を刺激する援助が重要になることが伝えられました。その後、今回の事例を踏まえて、痛みを訴える認知症の高齢がん患者・家族への援助について、ミニレクチャーが行われました。
  • ミニレクチャーの様子
  • ミニレクチャーの様子
  • 参加証明書の授与
  • 参加証明書の授与
最後に、本年度3回の検討会すべてに参加して頂いた12名の方に、藤田佐和先生から参加証明書が手渡されました。そして、学んだことを現場のスタッフに伝え、スタッフとともによりよい看護実践に向けて取り組んでほしいとメッセージが伝えられました。
本年度のアンケート結果から、参加者は、新たな知識を得ることだけでなく、他施設での取り組みなどを多職種の方々と意見交換することで、日々の看護実践へのヒントが得られ、モチベーションが高められていることが分かりました。今後も看護職の皆様のニーズに沿う「質の高いがん看護実践を検討する会」を企画し、継続していきたいと思います。来年度も多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

お問い合わせ:
藤田研究室 TEL&FAX 088-847-8704 e-mail fujita@cc.u-kochi.ac.jp
e-mail送信時には@は@に変換をお願いします

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