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ご挨拶

Hiroko Minami,President

近年の災害は多様化、複雑化、更には長期化しており、国境を越え相互に関連し人々の生命・生活に深刻な影響を及ぼしています。そのグローバル化した問題に対処していくためには、従来の国家を中心に据えたアプローチだけでは不十分になってきており、社会の新しいコンセプトとして様々な主体及び分野間の関係性をより横断的・包括的に捉える「人間の安全保障」が重要視されています。

私たちはこれまでも看護実践、研究、教育を行いながら災害看護学の体系的な構築を行ってまいりました。2011 年 3 月に発生した東日本大震災においても、発災直後から、多くの看護師が現地へ行き、あらゆる年代の個人および家族、集団、コミュニティを対象に、健康増進および疾病予防から病気や障害を有する人へのケアを行い、今もなお復興に向け、地域で研究、教育なども含め幅広く活動しています。

しかし、これまでに経験したことのない規模と原発問題などで複雑化した事態の中で、多くの重要な課題も浮き彫りとなりました。それは災害に立ち向かうには、分野を横断した問題が多く、その情報・資源も限られる中で全体を俯瞰し、様々な職種と協働する中での意思決定が必要ですが、そのリーダーシップを発揮する高度な人材が不在だったということです。

近い将来に発生が予想される南海トラフの巨大地震の可能性、更には自然災害だけではなく、テロや新型インフルエンザなど未曾有なものへの対策も急務であり、その為には、国際力、学際力を備えたイノベーティブなその人材育成が必要です。

そこでこれまで災害看護学を牽引してきた高知県立大学、兵庫県立大学、東京医科歯科大学、千葉大学、日本赤十字看護大学の国公私立の5大学院が一丸となり、人間の安全保障を共通理念とし、それぞれ蓄積してきた資源を共有し、日本や世界で求められている災害看護に関する多くの課題に的確に対応・解決し、学際的・国際的指導力を発揮し、人々の健康社会構築と安全・安心・自立に寄与する「災害看護グローバルリーダー」の育成に取り組むことに致しました。

現在、日本において看護系大学は200校を超えており、90万人を超える看護師が就労しています。大学院の数も増加する中、国内外の多様な社会への発信と対話、大学院修了者の活躍の視点を重視した大学院教育の質の保証・向上のための施策とともに、各大学では将来を見据え、次世代の看護実践者ならびに看護学研究者を育成していきつつある段階にあり、我が国の看護系大学院教育と災害看護学構築を牽引してきた大学院の挑戦でもあります。

これは現在の看護教育の枠を打破するものです。また学際的な知の集約との観点からも大学院教育の変革モデルを提示する波及効果も期待できると考えています。

皆様方には、本プログラムの災害看護教育・研究の活動に一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。


高知県公立大学法人高知県立大学学長

南 裕子

Hiroko Minami



このプログラムは、文部科学省「平成24年度博士課程教育リーディングプログラム」に採択されて実施しています。