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【レポート】熊本地震での活動について





4月14日(木)・16日(土)に発生した熊本地震において、その10日後の4月26日(火)から現地に入り、5月5日(木)までの間、御船町で活動をさせていただきました。御船町は4月16日(土)の本震では震度6弱を観測し、死者2名、1,500棟以上の家屋が全半壊しておりました。私たちは御船町保健センターに受け入れていただき、指定避難所の訪問および各都道府県より派遣されている災害派遣保健師とともに、85行政区ある地域の被災状況の把握や要支援者のピックアップ、訪問などを行いました。

その中で、活動を通して得た私たちの学びや課題は大きく分けて以下の3点です。

1.地震への不安が続く被災地の住民の方々
熊本地震は余震が多く、住民はその恐怖感と共に過ごしている様子が印象的でした。車中泊や家先のテントなどで寝泊まりしている方が非常に多く、家では怖くて眠ることができないというその恐怖感とはどのようなものなのか、計り知れないものがありました。‘地震の揺れへの恐怖’という本質的なものをどうすることもできない中で、住民へできるケアとはどういうものがあるのか、またその恐怖心などから疲労が垣間見える方々へ、一体どのような支援ができるものなのか、多くのことを感じ迷い無力感を伴うこともありました。しかし、訪問しお話しする中で気がほぐれたり涙を流される方もおり、短時間でも被災された方に寄り添い、思いを傾聴することは、被災後の大切なケアであると改めて感じることができました。また、その中で健康や生活にも視点を広げ、包括的なケアの方法を検討し実施していくことが、看護の役割として大切であると考えることができました。

2.地域コミュニティーの共助力の高さと重要性
地域への訪問を行う中で、それぞれの地域の自治会長や民生委員が、住民について非常に多くのことを把握し、助け合っていることを知りました。彼らが独居高齢者の自宅に物資を届け、訪問時に涙ながら不安を話す住民を癒す姿を見て、災害時での共助の重要性を改めて認識する機会となりました。それと同時に、住宅損傷の激しい地域での今後のコミュニティー維持や体制作りの必要性を感じました。また、彼らからの聞き取りの中で、その地域での自主防災組織がうまく機能できなく、活動の負担を感じているという地域を知りました。地域自体も少子高齢化が進み、有事の際にうまく機能するにも難しい状況があるとのことです。これは全国的な問題とも考えられ、地域の実情に合わせた仕組みづくりが必要であるとともに、彼らを支えることが地域全体を支えることであると考えられました。

3.地元保健師を中心とした連携の取れた支援活動
私たちは今回初めて災害派遣保健師と連携しながら地域活動を行いました。外部の保健師は地元の保健師を常に中心としながら、これまでの災害での経験を活かして円滑に、そしてタイムリーに活動しており、それを間近で見ることができました。被災された住民を念頭に置き必要な支援やどのように分担して活動するべきかを構造的に考え、いつどのタイミングで何を地元保健師に相談していくのかなどをその状況に合わせて判断されていました。地元保健師もまた、被災された住民のことを最優先に考え、外部支援を有益なものにしようと協働しており、その受援力の高さを感じました。現場には多くの知が集結しており、それらの知を得て現場で発揮することや、多くの看護職に浸透するための方略など、災害看護の知の構築には多くの視点があることを改めて認識する機会でした。

現地の1日でも早い復興を願いながら、継続的な支援のあり方を模索し、今後も災害看護の知の構築に向け今回の経験を活かしていきたいです。





このプログラムは、文部科学省「平成24年度博士課程教育リーディングプログラム」に採択されて実施しています。