災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成11年度 研究活動の報告


◆◆ 災害時の看護の役割の明確化
2.「災害時の看護の役割」の検討
 本研究では災害時の看護の役割を明確化する方法として、「災害時の看護の役割」に関するデータを集め、それをKJ法を用いてカテゴリー化し、互いのカテゴリーの関係性を分析することにより、看護の役割の要素という観点と、看護の役割の要素の関係性という観点から分析を行うこととした。
1)災害時の看護の役割データ収集
 検討会メンバーとその施設の看護職に「災害時の看護の役割」として、「何の目的で、何をしたか/何をすべきか」を行動レベルで列挙してもらった。災害支援の経験がある看護職に対しては「何をしたか」と「何をすべきか」、また、災害支援の経験が無い看護職に対しては「何をすべきか」という視点で列挙してもらった。その結果、病院に所属する看護職が106人、保健所に所属する看護職が65人で、計171人からデータが得られた。行動レベルでの得られたデータの総数は1590件であった。
2)収集データのカテゴリー化(KJ法)
 収集したデータを用い、具体的な行動の意味を重要視し、かつ何の目的でその行動をとったのか/とるべきかを中心に、災害看護プロジェクトチームにより分析を行った。KJ法を用い、行動の目的の類似するものをグループ化し、更にグループ毎にそれらの目的の類似するものをグループ化するという方法で、カテゴリー化を行った。その際、それまで収集した文献の検討結果や、インタビューの分析結果をカテゴリー化のため資料として用いた。
 その結果、大カテゴリー5項目、中カテゴリー15項目、小カテゴリー41項目、その下のカテゴリー124項目にまとめることができ、これを今後の検討のための原案とした。


図4 KJ法による「災害時の看護の役割」のカテゴリー化、体系化

3)「災害時の看護の役割」の原案を検討会にて検討
 災害看護プロジェクトチームにより作成された原案を検討会において審議した。
4)「災害時の看護の役割」の原案を各施設にて検討
 検討会の審議結果を検討会のメンバーの所属する各施設に持ちかえり、疑問点、追加/削除すべき点等の意見をもらった。
5)「災害時の看護の役割」を災害看護プロジェクトチームで再検討、再体系化
 災害看護プロジェクトチームにおいて、各施設からの意見を反映させ、再体系化した。その結果を検討会にて再び審議し、それを今年度の研究成果である「災害時の看護の役割」とした。
 その結果、大カテゴリー5項目、中カテゴリー13項目、小カテゴリー37項目、小カテゴリーの下のレベルに126の項目を設けた。小カテゴリーの下のレベルの項目は、上位レベルの項目が具体的にイメージできるように設けたものであり、検討が未だ充分ではないため、本研究の成果物としての「災害時の看護の役割」の中には含めないものとする。尚、この項目を本報告書ではA項目と称している。
 大カテゴリー間の関係を図5に、それに中カテゴリーを加えた関係図を図6に示す。図5において、効果的および効率的に被災者/潜在被災者に適宜看護を提供するためには、看護の対象者に関する的確な情報収集を行い、それに対し的確にアクションをとらなければならない。そのためには、図中に示す大カテゴリー間の関係性が必要であると考える。

図5 カテゴリー化された「災害時看護の役割」大項目と看護支援システム →

 「災害時の看護の役割」を効果的に発揮させる仕組みを、ここでは「災害時看護支援システム(仮称)」と称している。システム内部では、まず収集した情報より「被災状況を把握」することから始まり、その情報を基に「健康レベルの維持・回復」、「安全の確保・保持」、「被災者の生活の立て直し」という看護の役割を発揮する。左の枠の状況把握と右の枠の具体的な看護は、常に連携して臨機応変に対応すべきものと考える。これら看護の役割を充分に発揮させるために、下方の枠の「救護救援システムの構築と運用」という間接的な看護の役割が必要となる。この役割は、普段の災害看護に対する準備等、災害発生前のものも多く含み、如何に効果的/効率的に看護の役割を発揮させるかという部分である。図6は、災害看護支援システムの内部のみ看護の役割の観点から中カテゴリーも含めて表したものである。

図6 災害時の看護の役割とその関係性(大/中カテゴリー) →

 更に、小項目とA項目を含めた「災害時の看護の役割」を表3に示す。尚、右側の欄の数値については、後述する「災害時の看護の役割の重み付け」で説明する。

6)災害時の看護の役割に関する今後の課題
 本研究では、以上の成果を検証するため、災害看護のエキスパートの方に、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、以下の観点から意見を伺った。

・各カテゴリーの表現や内容、および項目の分け方が適当かどうか。
・災害時の看護の役割に関し、大切だと考えるところ、また、これまで手が出せていない部分は何か。

表3-1 災害時の看護の役割とその重み →

その結果、以下の点が指摘された。

<全体的な意見>
・用いる概念の定義が必要ではないか。例えば健康をどう捉えているのか。
・実践の中で活用するためには、A項目の下に専門職としての視点が必要になる。
<カテゴリーの内容への意見>
・「社会的な痛み」への対応が必要になるのではないか。
・環境整備の中に人的な環境の整備も必要なのではないか。
・生活の立て直しの中に、地域のアセスメント、生活のアセスメントが必要ではないか。
・災害時は住宅問題も大きな問題なので、小項目レベルで必要ではないか。


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