災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成11年度 研究活動の報告


◆◆ 災害時の看護の役割の明確化
3.「災害時の看護の役割」の重み付けの方法の検討
 本研究では、表1に示した通り、看護の役割は、災害の種類、時間(軸)、活動場所、役割を果たす職種、支援の参加の仕方の差異により、その程度が異なると考えた。例えば、表1において、「水害」の場合の、「地域」における、「派遣看護婦・士」の場合と「常勤保健婦・士」の場合では、果たすべき役割が異なることが予想される。更に、時間の経過と共にその役割を必要とする程度も変化すると考えられる。また、地域の常勤看護婦・士に当てはまる看護職は希であるなど、「災害時の看護の役割」の枠組みの全てが同等な役割であるとは考えられない。即ち、要因の組み合わせによっては、役割そのものが存在しない場合や、非常にその役割が必要とされるなどの、役割の重みが異なると考えた。

 本年度は、以上の仮説を前提として、災害時の看護の役割の必要性(重み)の変化を分析し、今後の役割の重みを議論するための方法を検討した。

1)災害支援活動経験者による原案作成
 重み付けの基本的事項として、まずその役割がそれぞれの要因の枠組みの中で「必要」か、「必要でない」か、あるいはその役割そのものが存在しない「適用外」かを分析した。次に看護の役割が「必要」なものに関しては、どの程度必要かを以下に示す1〜3のレベルに分けて分析した。

NA:適用外(看護の役割そのものが存在しない)
0:必要無し(看護の役割は存在するが、その時点では必要が無い)
1:必要
2:必要と非常に必要の中間位
3:非常に必要

 具体的な重み付けは、検討会メンバーの中で、災害支援活動をされた方に災害看護プロジェクトメンバーが直接インタビューする形で行った。

2)「災害時の看護の役割」の重み付け原案を検討会にて検討
 災害看護プロジェクトチームにより作成された原案を検討会において審議した。
3)「災害時の看護の役割」の重み付け原案を各施設にて検討
 検討会の審議結果を検討会のメンバーの所属する各施設に持ちかえり、疑問点、追加/削除すべき点等の意見をもらった。
4)「災害時の看護の役割」の重みを、災害看護プロジェクトチームで再検討
 災害看護プロジェクトチームにおいて、各施設からの意見を反映させ、再体系化した。その結果を検討会にて再び審議し、最終結果の同意が得られたことで、検討した重み付けのプロセスを今年度の研究成果とした。
 大カテゴリー「被災者の生活の立て直し」/中カテゴリー「生活ニーズへの対応」/小カテゴリー「生活行動の援助」の中のA項目の49番である「生活支援」を例に、災害時の看護の役割の変化について説明する。表3の右側の欄に示す数字は、災害時の看護の役割への重み付けを行った結果であり、数値およびNAの意味は前述の通りである。「生活支援」の、常勤保健婦・士と派遣看護婦・士の「災害時の看護の役割の重みの変化」をグラフに表したものが図6である。尚、図中「-1」はNA(適用外)を示す。
 「生活支援」の役割は、常勤保健婦・士と派遣看護婦・士どちらの場合でも、災害前はNAである。災害の起こる前における「生活支援」の具体的な役割は存在しないことになる。災害が発生して24時間までは、常勤保健婦・士のこの役割は最も高い3の「非常に必要」になる。この役割が最も高い3だからといって他の役割が低くなる訳ではなく、役割一つひとつは独立して、時間や場所等の条件により重みが決まってくると考えている。派遣看護婦・士のこの時点の「生活支援」の役割はNAで、役割そのものが存在しないと考えた。災害発生後24時間から72時間では、常勤保健婦・士の役割は相変わらず3の「非常に必要」であるが、派遣の看護婦・士の役割の程度も1の「必要」に変化し、救急救命等の役割に合わせ「生活支援」の役割も果たすべきと考えた。72時間から2週間では、生活物資等の供給も始まり、常勤保健婦・士の「生活支援」の役割は1ランク低くなり2に変化すると考えた。一方、派遣看護婦・士の場合は、看護者として被災者の「生活支援」の役割を1の「必要」のレベルでは果たすが、それ以上の役割は常勤保健婦・士に譲り、診療機能の維持等の役割に重きを置くべきと考えた。2週間から1ヶ月経過すると、生活物資等の供給も順調になり、ボランティアのサポートも可能となるので、常勤保健婦の「生活支援」の役割は、1の「必要」のレベルになると考えられる。また、派遣看護婦も前のTime Phaseと同様に1のレベルを維持する。1ヶ月から3ヶ月では、常勤保健婦は1の「必要」のレベルを維持するが、派遣看護婦は派遣を終えるため、NAの「適用外」となる。3ヶ月以降も役割の重みは同程度と考えられる。
 本節の目的は、「災害時の看護の役割」の重み付け方法の検討であり、重み付けそのものを議論することではなかった。あくまでも前述の説明は、重みの捉え方の議論のためのものであり、このように考えると「災害時の看護の役割」の重みを付けることができ、それをすることにより効果的/効率的に災害時の看護の役割を果たせることを示している。

図6 49番「生活支援」の災害時の看護の役割の重みの変化 →


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