災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成13年度 研究活動の報告


◆◆ 平成12年度の研究成果発表

「災害時の看護の役割」の洗練化

高知県災害看護支援ネットワーク検討会

 
 
 
 
 
 
山田覚、梶本市子、井上郁、岸田佐智、山本智恵、福田亜紀、山﨑美惠子、加納川栄子、森下安子、東郷淳子、大川容宣(高知女子大学)

明神末喜、橋田富美、伊藤眞木、秦菅、池田百合江、藤井美智子、西野恵美子、尾崎久(災害支援病院)

秋田美智子(高知県看護協会)

1.はじめに
 本検討会は、高知県下の全災害支援病院11施設および3つの保健所の災害に関する看護職の代表者、看護協会の代表者、そして大学の各看護領域からメンバーを募り、現在総勢27名で平成11年以来活動している。昨年報告した「災害時の看護の役割の抽出」においては、文献収集、災害看護支援者へのインタビュー等から災害時の看護の役割のデータを集め、KJ法等を用い役割の体系化を試みた。更に、阪神淡路大震災で看護支援の経験を持つエキスパート数名に意見を伺うなど、その信頼性/妥当性を高めることに努めて来た(日本災害看護学会第2回年次大会にて口頭発表、日本災害看護学会誌 第2巻3号)。しかし、信頼性/妥当性の客観的な指標はなく、十分な役割の分析ができない状態であった。そこで、IDEF法というワークフロー分析手法を用いて、災害時の看護の役割を洗練化することを試みたので、その方法とそれによる効果を報告する。

2.研究の方法
 災害時の具体的な看護の役割は動的であり、時間の流れの中で情報を得たり、資源を活用しながらその役割が発揮されていることに着目した。そこで、システム思考を導入し、役割と役割の関係性を動的に捉えようと分析手法の探索を試みた。その結果、産業界でシステムの改善や改良を目指す分析手法として用いられているIDEF法に着目した。
図 IDEF法の基本単位 →
 図に示す通りIDEF法の基本単位は、5つの部分から構成されている。真中の箱はアクティビティーと呼ばれるもので、災害時の看護の役割一つひとつがこの箱に対応すると考える。その他に4つの矢印があり、左からアクティビティーに入って来るものがインプットで、アクティビティーが処理する情報や物に当たる。上からの矢印はコントロールと呼ばれ、アクティビティー即ち看護が機能するためのルールや制約条件が入って来る。下からの矢印はメカニズムと呼ばれ、看護が機能するための資源である。右に出て行く矢印はアウトプットで、得られる成果であり、看護の役割が発揮されたことによりインプットが変化した結果である。このように、IDEF法を用いると、役割と役割の関係性が、4つの矢印の入出力で動的に分析できる。この方法を用い、「災害時の看護の役割」を動的な視点から洗練化した。

3.結果
 大項目「救護/救援システムの構築と運用」の下の中項目を例にとると、「活動の効率化」、「診療機能の維持」、「組織作り」、「実践力の育成」の4項目から「活動の効率化」、「診療機能の維持」、「被災者の生活機能の維持支援」、「組織作りのための人員確保」、「実践力の育成」の5項目に洗練化された。「被災者の生活機能の維持支援」が追加されたのは、「救護/救援システムの構築と運用」が、現場の役割を支援するサポートシステムのため、現場の役割に対応してこの機能が必要であることが、役割の関係性分析を通し明らかになったためである。また、「組織作り」から「組織作りのための人員確保」というように役割が具体化され、現実的な視点から役割が分析できた。以上の様なことから、IDEF法によるワークフローの分析が、災害時の看護の役割を洗練化するために有効であることが示唆された。

4.今後の課題
 本研究では、役割間の関係をこれまでより動的な視点で分析することはできたが、それらを具体的な情報等を流して動的に分析しているわけではない。従って、今後の課題として、仮に災害が起きたと想定したとき、これらの役割の関係性が適当かどうか、シミュレーション等により更に検証する必要があると考えられる。 (本研究は、平成12・13年度文部省科学研究費の助成を受けた研究の一部である。)


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