災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成18年度 研究活動の報告


◆◆ 平成18年度の研究成果発表

災害看護活動における地域の横の連携

高知県災害看護支援ネットワーク検討会
山田覚、森下安子、谷脇文子、粕田孝行、竹崎久美子、大川宣容、佐東美緒、吉田亜紀子、井上正隆 (高知女子大学)、浅野裕子、池田百合江、山崎久美、秦菅、藤井美智子、太田隆子、藤川夕子、宮井千恵、池田恵美子、竹崎種美 (災害支援病院)、中村ささみ (高知県看護協会)

1.はじめに
各都道府県では、地域防災計画に則り、災害時の救急医療対策がそれぞれ講じられ、具体的にマニュアル等が作成されている。それ等に記載された活動を確実なものにするための一つとして、地方自治体(以下自治体)と専門職能団体間で、災害時における協力協定が多く結ばれている。A県においても協定締結に向けて準備を進めていることは、本学会での過去の報告の通りである。しかしその一方で、作成された縦系列のマニュアルに則り、協力協定に従うだけで十分に活動が展開できるとも限らない。本研究では、地元自治体の防災計画をベースとしながら、災害看護活動の充実を目指した、看護組織および看護職間における連携のあり方を検討したので報告する。

2.研究の方法
A県で発行している災害対策に関する資料、および災害看護協力協定等に関し自治体と検討した資料を基に、発災後における関係機関の連携構想について分析した。また、本ネットワーク検討会に所属する福祉保健所および災害支援病院に対して、発災時における連携の可能性に関する予測調査を実施した。倫理的配慮として、研究参加、学会発表等について関係機関の同意を得た。

3.結果と考察
1. A県での災害看護活動の状況 A県では、協力協定が看護職能団体と県および市町村の単位で結ばれようとしているが、協定締結後は、A県の「災害医療救護計画」に基づき、「A県災害救急医療活動マニュアル」(以下、マニュアル)に従って、災害看護活動が展開されることとなる。県の災害対策本部から災害医療対策本部を経て、県下6箇所に設けられる医療支部およびそれに所属する災害支援病院や災害救護病院、あるいは仮設の救護病院や医療救護所等に情報が伝わり、互いに連携しながら活動する。しかし、このマニュアルの浸透率は不十分であり、配布されても全ての関係職員が熟知するまでには至っていないのが現状であった。
(本研究は、平成14・15年度文部省科学研究費の助成を受けた研究の一部である。)

2. 医療支部と広域/災害支援病院の現状 上記は本ネットワーク検討会メンバーの認識の差からも裏付けられた。上部組織である医療支部や広域災害支援病院からは、より自治体本部に近いためか、マニュアルに従うことが第一であること、および推定される被災状況から横の連携がとり難いことが指摘された。一方、下部組織である災害支援病院は、県等の上位自治体からの支援を受ける立場であるとの認識のためか、比較的横の連携は容易であるとの回答が多かった。全体として、災害医療救護計画における役割の差異による認識の違いや、被災状況による横の連携のとり難さが明らかとなった。

3. A県での災害看護活動の課題 マニュアルは、県の災害対策本部から末端の医療救護所までのそれぞれの役割を明確化し、連携方法を規定するものであり、災害時の医療対策を講じる上では必要最低限の事項を明確にしたものにすぎない。このようなマニュアルの存在に対し、医療支部や広域災害支援病院からは、実際の連携手段が確立されていない事実が指摘され、下部の災害支援病院からは、手段がないにもかかわらず、マニュアルによって「支援して貰えるのではないか」と漠然と認識しているという実態が明らかとなった。

4.結果
自治体により策定された災害医療に関するマニュアル等では、縦系列の連携システムが主に規定されているにすぎず、更に通信経路等の断絶により、システム全体が機能しなくなる恐れがある。上下機関双方からの積極的な連携の模索と、縦系列のそれを補完する横系列の連携システムが必要である。また、指摘された横系列の連携システムは、医療支部等の自治体本部に近いレベルや、災害支援病院等の現場レベル、あるいは看護職能団体等のそれぞれのレベルで、災害対策の認識に差異があることを考慮しながら構築すべきである。


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