災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成22年度 研究活動の報告 目次

◆◆ 都道府県看護協会と都道府県との災害看護協力協定の内容
高知県災害看護支援ネットワーク検討会
山田覚、森下安子、谷脇文子、竹崎久美子、大川宣容、井上正隆、高谷恭子(高知女子大学)、秦菅、太田隆子、小松香代子 (災害支援病院)、中村ささみ(高知県看護協会)


1.はじめに
 都道府県看護協会(以下、看護協会)と都道府県(以下、県)の間で、災害看護協力協定を締結するところが次第に増えている。しかし、明確な統計はなく、どの県でそのような協力協定が締結されているのか、あるいはどのような協定内容であるのかわからないのが現状である。そこで本研究は、各看護協会と県とで締結されている協定が、どのような内容であるのか、その実態を調査したので、それらを報告すると共に、協定のあるべき姿を考察する。


2.研究方法
 全ての看護協会および県に、互いの災害看護協力に関する質問紙を送付し、回答を求めた。本調査は、高知女子大学看護研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。


3.結果と考察
 看護協会から39件(回収率83.0%)、県から35件(回収率74.5%)の回答があった。47都道府県の内、看護協会あるいは県のどちらか一方が必ず回答しており、災害看護協力協定に関しては100%状況が把握できた。

1.災害看護協力協定の締結状況
 看護協会と県の間で災害看護協力協定を締結しているところは、13ヶ所(27.7%)であった。締結時期は、表1の通りで、阪神・淡路大震災以降徐々に締結されて来ているが、新潟県中越地震および中越沖地震による災害支援ナースの具体的な活動を受け、協定締結を検討する看護協会が増加して来ているのではないかと考えられる。

表1 災害看護協力協定締結の時期
9 10 13 15 18 19 20 21
1 2 1 1 1 2 3 2

2.協定締結対象組織
 13ヶ所中11ヶ所が看護協会と県との2者協定であったが、2ヶ所は県ばかりではなく、市町村も含めた3者協定であった。災害が起こると、県の指揮命令系統はなかなか計画通りに稼働しないことが知られており、そのような状況のもと県のみの要請や相談で災害看護活動を展開しようとしても、困難を伴う。先ずは、災害現場の身近な市町村と連携して活動を開始すべきであり、その場合市町村を含めた3者協定が効果的であると考える。

3.派遣される看護職の保障と補償の状況

1)保障の状況
 看護職の専門能力を現場で有効活用するためには、その能力発揮を保障するシステムが必要である。派遣された看護職の専門職としての身分保障に関しては、13ヶ所中3ヶ所しかその意見を尊重する等の条項を設けておらず不十分である。尚、保障を求める場合、派遣する看護職に対し常日頃から災害看護教育を実施し、能力発揮を保証することが前提である。

2)補償の状況
 13協定全てにおいて、災害救助法、あるいは各県の条例等により、傷害や損害を受けた場合に、それらを補償する条項を設けていた。中には、ボランティア保険も県から費用を負担して併せて加入することが盛り込まれているものもあり、補償システムがかなり検討されていると考えられる。

4.派遣の形態
 全ての協定において、基本的には県からの要請により看護職を派遣するものであるが、それに加え5ヶ所は、県との連絡がとれない場合には、看護協会独自の判断により看護職を派遣できることになっている。但しこの場合、当然のことながら、速やかに県へその旨を連絡しなければならない。


4.結論
 看護協会と県との災害看護協力協定は、全国で3割にも満たず、災害支援ナースを有効活用するための環境作りは、未だ不十分であると言える。また、効果・効率的な災害看護活動を展開するためには、看護協会と県に加え市町村も協定の対象とすべきである。更に、看護協会の独自の判断による派遣体制を確立し、派遣先にて看護専門職としての意見を述べたり、それを尊重する等の体制づくりも進めるべきである。

 
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