災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成25年度 研究活動の報告 目次

◆◆ 東日本大震災におけるA県保健活動支援チームの活動からみえた住民のニーズと活動体制の課題
第1報:住民のニーズ
 
高知県災害看護支援ネットワーク
小澤 若菜、石川 麻衣、竹ア 久美子、山田 覚、森下 安子、潮 由美子、川本 美香、辻 京子、 大川 宣容、高谷 恭子、下元 理恵、井上 正隆
高知県立大学看護学部、徳島大学大学院総合科学教育部博士後期課程


1.研究目的
 東日本大震災におけるA県保健活動支援チームの活動からみえた住民のニーズを明らかにする。そして、今後の災害時保健活動への示唆を得ることを目的とする。


2.方法
 対象:東日本大震災被災地の保健活動に従事するためA県から派遣された県・市町村の保健師と活動記録。方法:派遣保健師が記述した派遣時保健活動報告書から、住民の諸ニーズを抽出した。次に、活動内容をもとに、派遣された保健師14名へ活動をとおして見いだされた派遣先地域の住民のニーズについて面接調査をおこなった。なお、調査にあたっては、個人情報保護を厳守し、面接調査時は研究目的、意義、方法、倫理的配慮について説明の上、同意を得て実施した。


3.結果
.A県保健活動支援チームの活動の概要
活動期間:2011年 3月18日(震災後7日目)から同年9月30日までの約半年間。派遣先は、沿岸部の、職場や日常生活の基盤となる施設や家屋が壊滅的な被害を受けた地域であった。

.住民のニーズの内容
調査結果から、住民のニーズには、保健医療に関する健康ニーズと、くらしに関する生活ニーズがあり、次のような時間経過とともに変化していた。
(1)震災後7日目から2週間目
 この時期、避難所訪問による健康調査から明らかとなった住民の健康ニーズは、「体調不良の訴え」、「医療面への不安」、「医療・医薬品の不足」、「専門的医療・介護サービスの中断」であった。また、生活ニーズは、「情報の不足・生活物資の不足」、「生活環境の未整備」、「着替え・身体の保清の不足」、「不審者やよそ者への不安」であった。
(2)2週間後から2ヶ月目
 次に行われた全戸家庭訪問調査から明らかとなった住民の健康ニーズは、「感染症予防」、「こころのケア」、「生活不活発病・閉じこもり予防」、「口腔ケア」、等であった。避難先の移転に伴い「医療へのアクセス困難」、「慢性疾患の治療放置」が課題となり、「移転者への医療継続」を推進する必要があった。また、生活ニーズは、「生活物資の不均衡」、「生活不安の出現」、「疲労の蓄積」であった。
(3)2ヶ月後から半年目
住民の生活拠点が徐々に変わり、仮設住宅へ移行すると、住民の健康ニーズとして、「閉じこもり予防」、「疾病管理」、「未受診対策」などが継続して必要とされた。一方で、「精神的負担の継続」、「ストレスによる随伴症状」が顕著となり、「介護、療育の負担」も増大していた。この時期の生活ニーズは、「生活不安、生活再建の障壁」であった。


4.考察
 時間経過と共に様々なニーズが顕在化していた。震災後2週間は、医療ニーズが救護所によって解消される一方、集団生活の困難感により健康障害と生活ニーズは悪化することから、住民の避難生活の健康調査と健康二次被害を防ぐ支援が求められると考える。また集団生活に伴う感染症予防では、衛生管理の徹底と感染症対策の周知が必要となり、避難早期から予防的取り組みが重要であると考える。2ヶ月目以降になると、緊急度の高い健康ニーズは終息するが、生活の目処が立たない不安、孤独感からくるストレスにより、閉じこもり、未受診、身体機能の低下といった健康問題が発生することが考えられる。そこで、コミュニティや生活の再生、安定した保健医療サービスの提供が求められる。健康と生活ニーズは相互に深い関係があり、生活基盤が広範囲に崩壊する広域自然災害では、両方を視野においた保健活動を展開する必要があると考える。

 
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