11. 熱現象の微視的なとらえ方とエントロピーの微視的解釈

11-1. 物質は小さな粒子の集合体かも?

19世紀後半の時代、ボルツマンは「物質は小さな粒子(分子)の集合体かも知れない」と考えました。この頃はまだ、原子も発見されておらず、物質が粒子の集合体という証拠(実験事実)は、まだ何も発見されていなかった時代です。その彼のアイデアは、天才... を遥かに超えて「狂気」とでも言うほどの考え方です。今では「当たり前」のように小中学校でも教えている考え方ですが、20世紀初頭の天才的化学者ポーリングでさえ「原子は実在ではなく、元素の概念をモデル化したものだ」と述べたほどです。

彼はまず、気体は「入れ物の中で自由に動く粒子(分子)の集合体」と考え、まず「体積Vの箱の中で、N個の粒子が自由に動き回り、壁に衝突する」と言う問題を解きました。これは「気体分子運動論」と呼ばれ、簡略化したものは高校の物理や化学の教科書にも出ています。粒子が壁に衝突し跳ね返る時、粒子は壁から力を受けるから、逆に粒子は壁に力を与える。その力を全部の粒子について合計したものが、粒子集団が壁を押す力になり、これを力積の考えを使い時間的に「平均」をとると、「粒子集団が平均的に壁を押す力」になり、それを壁の面積で割れば「壁に働く圧力」になる、と考えました。そして、ニュートン力学に基づき粒子の運動扱い、「体積\(V\)の箱の中にある\(N\)個の質量\(m\)の粒子集団が、壁に与える圧力\(P\)」を求めました。

すると、 \[P=\frac{2}{3 V} \sum_{k=1}^{N} \frac{1}{2}m \upsilon_k^2 \] となりました。\( \sum_{k=1}^{N} \frac{1}{2}m \upsilon_k^2 \) は、箱の内部にある全粒子の運動エネルギーの和ですので、これを\(E_N\)と書きましょう。すると \[PV=\frac{2}{3 } E_N \] となります。

一方(理想)気体の状態方程式は、 \[PV = nRT\] と知られており、ここで\(R\)は「気体定数(物質によらない定数)」、nは「物質量(現在の単位系ではモルを使いますが、物質の量に比例する量であれば、何でも良いです)」です。この式は気体の「圧力 \( P \) と、体積 \(V\) と、温度 \(V\) の関係を、実験的に求めたもの(経験則)」です。
 ボルツマンは、もし気体が粒子(分子)の集合体なら、両者は等しいはずなので、2つの式の右辺同士は等しく、 \[ \frac{2}{3 } E_N = nRT \]つまり\[ E_N = \frac{3}{2 }nRT \]になるはずだ、と考えました。

もし粒子の全エネルギーではなく、平均のエネルギーで考えるなら、\( \bar{E}=E_N / N\)と置いて、 \[ \bar{E} = \frac{3}{2 }(\frac{nR}{N}) T \] ここで、\( \frac{nR}{N} \) は、物質の量に比例する数\(n\)を粒子の個数\(N\)で割ったものに物質によらない定数を掛けただけだから、結局「物質によらない定数」になるはずと考え\(k\) と書きました。これが「ボルツマン定数」と言われる数です。この数を使うと、 \[\bar{E} = \frac{3}{2 }k T \]

となります。つまり「粒子の平均運動エネルギーは、温度に比例する。この性質は物質によらない」と言うことになります。

すると逆に、「温度とは、粒子の平均運動エネルギーを測る尺度」と言う解釈ができます。なお実際には粒子(分子)が単原子分子(球対称)か2原子分子(鉄亜鈴型)かもっと複雑な形をしているかで違うのですが、そう言うこと(分子や原子が存在することや、形があること)は、ずっと未来に分かったことですから、そう言う「細かい話」は、ここでは省略します。いずれにせよ、この関係を(細かいことも含めて)精密化したのが、現在(2019年以降)の国際標準単位系で、現在ではこのボルツマン定数が「1.380649×10-23J K-1である」と決めることが「温度」を決めること(つまり温度の定義と絶対温度単位K(ケルビン)の定義になっています(なお摂氏の温度とは、絶対温度(K)-273.15 の値のことでこれを℃と書いています)。

気体を、このように粒子集団と考えるならば、気体の内部にあるエネルギーつまり、「内部エネルギー\(U\)と呼んでいたもの」は、箱の内部にある全粒子の運動エネルギーの和\(E_N\)ですから、 \[U=E_N=\frac{3}{2 }nRT=\frac{3}{2}N\bar{E}\] というとになります。つまり「内部エネルギーとは、物質を構成している全粒子のもつ力学的エネルギーの総和」という形で、すっきりと、その意味が分かりました。

これで熱力学第一法則の意味が「粒子集団」として、理解できました。


では次は、熱力学第2法則です。

粒子集団を考えると、もちろん1つ1つの粒子は「ニュートンの運動の3法則」に従います。ここで「大きな疑問」が生まれます。それは、ニュートンの運動の3法則は、時間\(t\)を逆転させる、つまり、\(t=-t'\) と置いて、\(t'\)が時間だと思って式を変形すると... 元の式と同じ式に戻ってしまう、という性質を持っています。これを「時間反転不変」と言いますが、たとえばボールの運動を動画に撮って「逆再生」すると(時間変化を、未来から過去の方向に見てみると)、それは普通に運動法則を満たす(不自然な動きではない)ということです。つまり、「粒子の運動法則(ニュートンの運動の3法則)は、時間的に逆転した現象は可能」つまり、常に「可逆変化」である、という結果になってしまします。もし、氷やお湯が「粒子集団」ならば、1つずつ粒子運動は「可逆」なのだから、それが集まったものも可逆になるはずです。それならば、お湯で氷を温められるなら、氷でお湯を温めることも可能であるはずです。ここまで理解すると、いよいよ「なぜ氷でお湯を温められないのか?」が、とても大きな「謎」に見えてきます。


11-2. エントロピーとは?

導出は、物理的内容も、ものすごく複雑な問題を、ものすごく難しい数学の理論(無限に沢山の変数を使った偏微分の数学=変分法)で、ものすごく難し数式を駆使して行うので、全部省略して、まず、ボルツマンの得た答えから紹介します。 \[S=k \log W\] なお、この式はボルツマンの墓にも刻まれています(^^; (Winipedia で「ボルツマン」を調べてみてください。墓の写真もそこにあります) なお「対数苦手だし嫌い!」と言う方は、対数関数は単調増加関数なので「Sが大きい(増える)とはWが大きい(増える)ということ。Sが0というのはWが1のこと」とだけ思っていただければ、それでよいと思います(^^; \(k\)は先ほど紹介したボルツマン定数、\(S\)がエントロピーで、W は「場合の数」です。え?「場合の数」って... 数学で確率などの話を教わった時「何通りありますか」と言うのを「場合の数」と言いましたが... それとなんか関係あるの??....て、実は本当に、その「場合の数」なんです。そして、意味はこれから説明しますが、場合の数は「確率」と関係していますから、エントロピーは実は「確率」と関係した量である、というのが、ボルツマンの天才的な大発見です。

簡単のため、氷とお湯の例ではなく、まず「気体の拡散」の例を取り上げましょう。これは「容器に入れた気体を、容器のふたを開けると、ぱあ~っと広がっていく」という現象です。これを「拡散」と呼びます。この現象を、「粒子の集まり」として考えていきます。

まず、2つの部屋が仕切られ、片方に気体が、もう片方は何もない(真空)とします。ここで2つの部屋の仕切りを取り除くと、気体は全体に広がります。これを気体の「拡散」と呼びます。逆に2つの部屋に広がった気体が「自然に、1つの部屋に集まる」ことはありません。ですから詳しい計算や説明は省略しますが、拡散は不可逆変化で\(dS>0\)となります。

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ところで箱の中に「粒子」は入っている場合、その粒子は右にあるのか左にあるのか、という問題を考えます。実際は多数の粒子を考えるのですが、難しいのでまず1個、次に2個... と増やして、最後には沢山の場合を考えていきましょう。

ではまず、右図のように、「1個の粒子が左にある場合」から出発しましょう(簡単のために、2つの部屋の大きさは同じとします)。時間がたてば、この粒子は、右に行ったり左に行ったりします。 全体の時間うち半分は右に、半分は左にあります。つまり、ずっと時間がたった時、この粒子が右にあるか左にあるかを観測すれば、確率\(1/2\)で右、確率1/2で左に観測されます。

では次に2個の場合。「最初に2つとも左にある場合」を考えましょう。この場合も、時間がたてば、2つとも右に行ったり左に行ったりします。2個のうち、どちらも右に行ったり左に行ったりし、粒子1つずつは全体の時間のうち半分は右に、半分は左にあります。2つとも左にある時間(確率)は全体の時間\(1/2 \times 1/2=  1/4\)、2つとも右にある時間(確率)も全体の時間の\(1/4\)になります。1つが右1つが左は....どちらの粒子が右か2種類ありますので、 全体の時間(確率)は\(2/4\)=1/2になります。

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この「右と左に1つずつ」という事象は、細かく言うと「2つ」ある、というのを「場合の数」と呼びます。つまり一括りに「右と左に1つずつ」と言っても、その内訳は2つある、この個数を場合の数\(W=2\)と呼びます。ちなみに「2つとも左」は、1通りしかありませんから、このときの場合の数\(W=1\)です。

では次に4個の場合。「最初に4個とも左にある場合」を考えましょう。この場合も、時間がたてば、4個とも右に行ったり左に行ったりします。4個のうち、どちらも右に行ったり左に行ったりし、粒子1つずつは全体の時間のうち半分は右に、半分は左にあります。4つとも左にある時間(確率)は全体の時間\(1/2 \times 1/2 \times 1/2 \times 1/2=  1/16\)、4つとも右にある時間(確率)も全体の時間の\(1/16\)になります。2つが右2つが左は....どちらの粒子が右か、4つの中かが2つ選び出す組み合わせの数は\( _4 C_2 =\frac{4 \cdot 3}{2} =6 \)ですので、 全体の時間(確率)は\(6/16\)になります。このときの組み合わせの数6が「場合の数」で、今の場合\(W=6\)になります。つまり「細かく粒子を区別した時」の確率は全部\(1/16\)だけど「同じ、とみる」場合の数が\(W\)であれば、そのことが起きる確率は、場合の数に比例します。ですから、「全部左にある」より「左右に2個ずつ」の方が確率が(6倍)高いので、「左右に2ずつ」が観測されることが多くなりますし「2つとも左」が観測されることは少なくなります。

では次に.... と続け、100個の場合を考えます。最初に100個全部左にある場合を考えましょう。この場合も、時間がたてば、全てが右に行ったり左に行ったりします。100個のうち、どちらも右に行ったり左に行ったりし、粒子1つずつは全体の時間のうち半分は右に、半分は左にあります。このとき、100個全部がまた左にある時間(確率)は全体の時間nの\(1/2^{100}=1/1267650600228229401496703205376 ~1/10^{30}\)になります....

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つまり、いったん左右に広がった100個の粒子が、また全部左に集まる確率は、\(1/10^{30}\)程度の「ものすごく小さな確率」になります。なお、右に\(n\)個ある確率は、二項分布という分布関数になり、グラフは右に書いておきます。50個(つまり半々)である確率が一番高く、右に60個以上とか40個以下とかになる確率はかなり減り、右に70個以上とか30個以下の確率は殆どありません。そしてグラフの遥か端が... 右に100個とか右に0個とかの確率で、これが、むちゃくちゃ小さい確率で、具体的には、\(1/10^{30}\)程度の確率、ということです。

これは「細かく見れば、1つずつの粒子は左右に同じ確率であるだけ」だけど、「右に100個」というのは1通りしかない(場合の数\(W=1\))けど、半々くらいたとえば丁度50個ずつと言うのは、\( W= _{100}C_{50} = 100891344545564193334812497256 \) 通りもある(だから起こりやすい)ということです。

なが~い数字(大きな数)が出てきましたから、ここまでの話をちょっと纏めましょう。

「最初100個の粒子を全部左に入れる」これは真ん中に敷居を入れて、全部左に入れておけばよいから、可能です。そこで敷居を外すと、粒子はそれぞれの速度で左右に動き回ります。1つずつの粒子は右にある時間も左にある時間も同じだから「時間が経過したとき、パッと見たら」、右にあることも左にあることもあり「その粒子が左にあると観測される確率は\(1/2\)」です。では、時間が経過したとき、パッと見たら「100個全部左にあると観測される」確率は、\(1/10^{30}\)程度になります。一方、丁度50個観測される確率は0.08くらいで、50個くらい、例えば45個から55個観測される確率は、半分( \(1/2 \) )を超えます。つまり、「左右半々くらい」の状態は普通に観測されるけど、「全部左」の状態が観測される確率はとても小さい(\(1/10^{30}\)程度)となります。

では、(\(1/10^{30}\)程度の確率、ってどのくらい起こりにくいのでしょう?例えば1秒間に1000回見たとします。1/1000秒に一回ですね。これを1年(寝ずに休憩も無しで)続けたとします。何回くらい観測できるでしょう? \( 1000 \times 60 \times 60 \times 24 \times 365 =31536000000~3 \times 10^{10} \)回です。これを200億年続けたとします。ちなみに宇宙年齢(この世が出来てから現在までの年数)は137億年と推定されていますから、それより長い時間です。\(3 \times10^{10} \times 2\times 10^{10}=6 \times 10^{20} \)回です。この程度の回数では(\(1/10^{30}\)程度の確率のことは1回も起こりそうにありません。では1人では大変なので、100憶人でやって、誰かか見たらOKとしてみましょう。すると全体の回数は100憶倍になるから、\( 6 \times 10^{20} \times 10^{10}= 6 \times 10^{30} \)となります。つまり、「100憶人で、1秒間に1000回見る、というのを宇宙年齢より長い200億年つづけたら、6人くらい見ることができるかもしれない(^^;」という「(現実的には絶対に起こらないと言って良いほど)とんでもなく起こりにくいこと」なんです(^^;;。

「たかが100個」で、です。では、もっと個数が多く、例えば1モル( \(6\times 10^{23} \)個 )ならどうでしょう?全部の粒子か左にくる確率は

\( 1/ 2^{6 \times 10^{23}}= 1/2^{600000000000000000000000}~1/10^{1800000000000000000000}\)ですから..... 「そんな小さな確率の出来事、絶対に起きない!」と言っても良いのではないかと思われます。なお、分母の数の「桁数」が1800000000000000000000桁という意味ですから、具体的にそんな大きな数書けませんし、たとえコンピュータの力を駆使して何とかして書いたとしても、たぶん世界一のコンピュータのファイル容量も軽く超えます(^^; では、「半々くらい」になる場合の数は.... これも、あまりに大きな数で書けませんが「とんでもなく大きな数」になることは、多分想像できると思います。

つまり、「粒子集団の運動」として気体の拡散現象を考えると「最初、左の部屋にあった気体が、時間がたった時、全体に広がる(半々くらいになる)」現象は観測できても、それがまた「全部左に集まった現象」というのは、「力学的にはありえても」「確率的には、あまりに小さすぎる確率であり、絶対に起こらない」と判断できると思います。

この、「確率的に大きな出来事しか、実際には起こらない」ということを言い換えると、「場合の数\(W\)が多い現象しか、実際には起こらない」ということになります。この「場合の数\(W\)」を言い換えたのが、(熱力学で導入された)エントロピー(\(S\))の正体だ、というのが最初に紹介した式の意味です。

正確に熱現象と結び付けるには、まず、「分子運動の速さの分布」から始めます。内部エネルギー(=粒子の全エネルギー)一定の下で、多くの分子が衝突をくりかえしながら、各粒子の運動エネルギーを交換し「確率的にでたらめ(ランダム)」の場合、一番確率が高くなる速度分布を求めます。これは(電磁気の話でも登場した)マックスウェルが計算し「マックスウェルの速度分布」と呼びます。この速度分布を仮定したばあい、「何個の粒子がその速度を持っているか」というのは、同じ速度分布でも「どの粒子がその速度を持っているか」という細かい見方をすると、何通りもあります。その「場合の数」を\(W\)と置き、マックスウェルの速度分布に従う全粒子の運動エネルギーの和(内部エネルギー)の式を作り、それを温度(前のページで定義した)で割って、今の場合外部からの仕事が無いから(\(dU=dQ\))とおいて、熱力学で導入されたエントロピー\(\frac{dQ}{T}\)に相当する量を計算してその積分量をみると..... なんと\(S= k \log W\)となる、ということを、ボルツマンが求めました。

「中身全く分からないけど、なんか、むちゃくちゃ難しい計算をすると、\(S= k \log W\) が出たんだね(^^;」 という理解で良いと思います。このような計算をする分野を統計力学と呼んでいますが、実際のこの計算、国立大学理学部物理学科のしかも優秀な学生でも3~4年生以上でないと多分理解できないでしょう(^^; また計算を追うことはできて、理解したとしても「何でボルツマンは、ノーヒントでこんな計算始めたんだ??」と、彼の天才ぶりに驚くだけです(^^;; 

いずれにせよ、「エントロピー」は粒子(分子)運動の「確率」と関係していて、確率は「何を同じとみるか?同じとみたものは、細かく1つ1つの粒子を識別して見たら、何通りのあるか(場合の数)」と比例していて、結局「エントロピー」は「確率=場合の数」と関係している概念だ、と言うことが分かりました。

そして「氷がお湯を温める現象は、(自然法則として)禁止されてはいないけど、そのようなことが起こる確率はとても小さく、もしそういう現象を見ることができたら、宇宙一のラッキーなんてもんじゃない、とてつもない幸運(だから現実には決して起きないと判断するのが妥当)」という理解になります。

ちなみに\(S=0\)は、\(W=1\) つまり、「粒子運動は、細かく見ても1通りにきまっている(複数の可能性が無い)」ということですから、「絶対温度0度」は「全ての粒子が静止している(速度は全部0という状態で1通りしかない)」状態であることを意味します。つまり、絶対温度0度\(T=0\)は、全ての粒子の速度が0で、この状態は1通りしかないから\(W=1\)で、\(S(T=0)= k \log 1 = 0\)となり、これが熱力学第3法則だと位置づけられます。


11-3. まとめと補足と予告

19世紀後半、ボルツマンは、「熱の本質は、粒子集団の運動」と考え、「粒子集団の運動として」熱力学の3法則を導きました。

そして、熱と言われていたものは「粒子のエネルギー」であり、物質を構成する粒子同士が交換するエネルギーが「熱」。入れ物の壁を動かしたり摩擦などの方法で外部からエネルギーを与えるのが「仕事」、内部エネルギーは「物質を構成する粒子(分子)の持つ全エネルギーの総和」、「エントロピーは確率、あるいは場合の数」「エントロピー増大則は、時間がたつと、確率的に少ない現象は観測できない(確率が大きい現象しか現実には起こらない)」と定式化されました。

しかし.... 「確率の話は、時間を逆転させても成り立つのでは?つまり、現在が確率の低い状態であれば、『過去への時間変化』でもエントロピーは増大しないか? もしそうなら、それを過去から現在の順で見れば、エントロピーが減少したことにならないか?」という反論を受け.... ボルツマンはこの反論に答えることなく、ピストル自殺と言う道を選びました(天才と狂気は紙一重ですね)。

この問題は、現在でもまだ本質的には解決していません。「なぜ時間が過去から未来へしか進まないのか?」と基本的に同じ問題だからです。逆に言えば「因果関係」という時間の流れを認めれば、「ある時刻に状況を設定する(原因)」と、「その後の時刻ではエントロピーが増大する(結果)」と理解できます。もし「現在が原因、で、過去が結果」であれば、エントロピーは、過去に向かって増大(つまり未来に向かって減少)します。

なんか、むちゃくちゃ難しい話につながってしまいましたね(^^;

では、「時間とは?」という疑問も出てきたところで、この後は20世紀初頭に解明された「時間や空間のしくみ(相対性理論)」の話に進みたいと思います。これは20世紀初頭、電磁法則(Maxwell方程式)と運動法則(運動方程式)の間に矛盾があることに何人かが気がつき、その矛盾を解決するには「19世紀まで、だれもが当たり前と思っていた、時間や空間の概念が、実は間違っていたのではないか?」ということにアインシュタインという人が気が付いたことから、時間と空間の仕組みの解明が始まります。そこでまず、次回は、そういう話に進むことを念頭に置きながら一旦「ここまでの話」を、全部まとめましょう。なお、ここまでの話全体、つまり19世紀までの物理学のまとめを「古典物理学」と呼んでいます。つまり、まず「古典物理学全体の世界観」をまとめ、そのうえで、(その次に)20世紀以降の「近代物理学」や「現代物理学」の話を紹介していこうと思います。

では、今日は、このへんで終わります。