2. 物体の運動の「基本法則(ニュートンの運動の3法則)」

2-1. ニュートンの運動の3法則=物体の運動の、基本法則

様々な自然界には様々な自然現象がありますが、ニュートンがまず注目したのは、最も単純な自然現象である「物体の運動法則」です。

そして、ガリレイが(実験という手法で)発見した、物体の落下の法則や振り子の等時性の法則など、多様な物体の運動は、全て最終的に「3つの基本法則」まとめられることを、ニュートンは見出しました。これが「ニュートンの運動の3法則」です。そして、この「基本法則」から、運動に関わる全てのことを理解していこうと試み、実際に、様々な物体の運動に関わる現象や法則(経験法則)は、全てこの3法則から導出することが可能であることを、著書「プリンキピア-自然哲学の数学的原理-」の中で、最初に論じています。 そのような「自然法則の探求方法」つまり近代科学あるいは物理学の探究方法を最初に生み出し、最初に適用した例として、まず、このニュートンが選んだ課題「物体の運動の法則」から見て行きましょう。

まず最初に、Webで「ニュートンの運動の3法則」を調べてください

ニュートンの運動の3法則の1つ1つは、既に「中学校理科でも扱われている内容」です。自分で調べて自分で学ぶ。つまり「自学自習(自学自修)」は、大学教育の根幹ですし、元々「大学」は自学自習の場です。自学自習(自分で調べて自分で学ぶ)ことは、大学生にとってまず最初に習得すべき技能の1つです。

調べましたか? たぶん皆さんが見つけた「ニュートンの運動の3法則」は、「普通の言葉(普通の日本語:元は普通のラテン語)」で書かれており、たぶん言葉で表現すると長いので、同じ内容を記号を使い短くまとめます。

【ニュートンの運動の3法則】
  1. 慣性の法則:もし \( \vec{F}=0\) なら \( \vec{v}\)=一定 (ここで、\(\vec{F}\): Force=力, \( \vec{v} \):Velocity=速度)
  2. 運動の法則(運動方程式): \(\vec{F} = m \vec{a}\) (ここで、m: mass=質量, \( \vec{a}\): acceleration=加速度)
  3. 作用反作用の法則:\( \vec{F}_{(A←B)}=-\vec{F}_{(B←A)}\)、(ここで,\( \vec{F}_{(A←B)} \)は物体Bから物体Aに働く力、\(\vec{F}_{(B←A)}\)は物体Aから物体Bに働く力)

なお、我々の住んでいる空間は3次元の世界(立体の世界)なので、力や速度、加速度は全て3次元のベクトルです.... って言ってもピンときませんよね(^^; でも敢えて完全な形で書いたのは、この授業では最初に「本物」を見ていただきたいからです。これからも「まず最初に基本法則を完全に、かつ簡潔な表現(=数式)で紹介し」、その後、その意味を、簡単に説明していきます。ですから、最初に(前回)述べたように、全部、完全に、理解する必要も有りませんし、また訳のわからない式を丸暗記する必要もありません。本物を見て、そこから皆さんが何かを感じ、何かを学ぶことが大切と思っています。なお、皆さんが各回の授業で「何を感じ何を学んだか」は、毎回の授業の最後に聞きますし、また授業全体の最後(期末試験)でも、まとめて「自分は、この授業を通して、何を見て、何を知り、何を感じ、何を学んだのか」を聞きます(それが期末試験の主な趣旨です)。


2-3. 運動を記述する量の導入(運動とは?位置、速度、加速度とは?)

先に進む前に、まず、ここに出てくる言葉(量)を、明確に定義しておきましょう。本当は3次元空間での話なのですが、数学的にややこしいだけなので、ベクトルの(詳しい)話は、また次の機会にします。まず1次元(一方向への直線運動しかない世界)で、本質的な意味を押さえおきましょう。実際には同じことが、縦・横・奥行きの、3つの向きに対して起こります。


これで全てです。ですから上記の内容全てを「既に学んでいて完全に理解できている」方は、下記2つの動画は飛ばして構いません。ですが.. 殆どの方にとっては、これだけではわかりにくいのではないかと思います?(^^; そもそも微分って?(^^;;という方も居るかもしれませんね(^^;(でも、そういう方でも、「何も分からない」ではなく、多分、速度一定のときの速度の定義は、小学校で教わっていますよね(^^))

なお、既に高校の物理や高校の数学で教わった方は、復習でもいいかもしれませんが「無限小時間を\(dt\)と書く、微分は無限小量間の割り算」という内容は高校の範囲外(高校数学では極限で微分を定義、高校物理では微分という言葉を使わずに、短い時間という扱い...という、縦割り主義の教育)ですので、初めて見るかもしれません。

そこで、この内容を、一応、講義動画でも、できるだけ詳しく説明します(なおこの動画は本学授業科目「数学入門」でも紹介していますで、そちらで見ている方は飛ばして構いません。また、詳しく説明しているため長いので、分かるところは適当に飛ばして、理解が怪しそうな部分だけ見ても構いません。)。

・位置と速度(動画:約25分:200MB)

・加速度(動画 約15分:140MB)

--余談---

ニュートンは、この3つの「基本法則」から、重力による落下が放物運動することや、振り子の等時性や… ありとあらゆる物体の運動に関わる現象が理解できることを示しました(余談:高校物理でニュートンの運動の3法則の名称も出てきますし、3法則個別には全て中学校理科でもあつかわれています。が、これらが「基本法則」であるという説明は、中学・高校では一切してないと思います。でも、これが「基本法則」である、といことが、実は「一番大切なこと」です)。ニュートンは、この基本法則に基づき、現象を個別に理解できるだけでなく、さらに物体の運動について成り立つ様々な法則、たとえば運動量保存則やエネルギー保存則なども、「全てこの3法則から導き出せる(=論理的に繋がっている)」ことを示しました。さらに、もし2つの物体の間に「その質量の積に比例し、距離の二乗に反比例する力(万有引力)が働くならば」天体(惑星)の運動も、この3法則から導き出せることまで示しました。

当時、天体は天界の物体、つまり人間界とは異なる神の住む領域の話と思われていましたから、天体(天界の物体)の運動を、人間界の物体の運動と同じ法則で理解できることを示したニュートンの偉業はいわば「人間界と天界の統一的理解」と言えるべき快挙でした。この時導入された「2つの物体(単体)の質量の積に比例し、距離の二乗に反比例する力の法則」が万有引力の法則です。

 ニュートンの運動の3法則 + 万有引力の法則 = 人間界と天界(=自然界)の統一理論??

この理論の特徴は、初期条件が与えられれば、「運動方程式」と「万有引力の法則」を連立させて解くことにより、解を(未来を)一意的に求めることができる」、という点にあります。言い換えれば、「ニュートンの運動の3法則+万有引力の法則」という4つの法則をから完全に論理的に(数学的に)構成される世界が作れる、ということです。そういう、(縦割り式でない)「広い視野で、総合的に統一的に...」を求めるのが、物理学です。

なお、こういう捉え方は、この4つの法則から作られる「仮想世界」を考えることと同じです。この「仮想世界」では、初期条件を指定すると未来は(計算に従い1通りに)進行していきます。そしてこの「法則からなる仮想の世界」は.... 「現実の世界」と同じ性質になる(見分けがつかない)、というところでしょうか?(なお、力は、万有引力以外にも、例えば電気や磁気の力などもあります。その話は後程。)

現代の、3DCG(3次元グラフィック)を駆使したリアリティのある「ゲームの中の仮想世界(ドライブシミュレータやフライトシミュレータ、リアリティのあるシューティングゲームや格闘ゲーム等の世界)」は、実際、このような手法で作られています(^^) そしてコンピュータ(ゲームマシン)の中にはこの運動方程式などを高速に解く仕組み「物理エンジン」というものが組み込まれています。ゲームの中のリアリティのある世界... それが「物理法則の世界」と思っていいのではないかと思います。なおこの仮想世界は、ゲーム(遊び)の世界だけでなく、例えば気象予報、飛沫の広がり...様々なことを知りたいとき(特に未来の予言)にも使われます。後ほど(次回)、具体的に、実際の計算(未来の予言)も紹介します。


2-4. ニュートンの運動の3法則の意味

ところで、ニュートンの運動の3法則、その「言葉通りの表面的な意味」は高校までに(主として中学校理科で)教わっているかもしれませんが、その「本当の意味」は結構奥深く、19世紀エルンスト・マッハにより初めて、その深い論理構造が探究され、明らかにされました。

1) 物体の位置を表現するための「座標」は、慣性の法則が満たされるような座標系(慣性系)を用いること。

2) 質量とは、物体の加速のしにくさを表す量である(2つの」物体が同じ大きさの力を受けた時、同じ加速をすれば同じ質量。半分の加速しかしないなら質量2倍。ある基準の物体の質量を \( 1 {\rm [kg] } \)と定義すると、半分の加速しかしない物体は \( 2 {\rm [kg] } \)の質量)。

3)  力とは、物体に加速を生じさせる原因である( \( 1 {\rm [kg] } \)の物体に \( 1 {\rm [m/s^{2} ] } \) の加速を生じさせる原因を\( 1 {\rm [kg \cdot m/s^{2} ]=1[N] } \) の力と呼びます。また、力(物体に加速を生じさせる原因)は、必ず「2つの物体の間に」相互に働き、(相手がいないのに)単体で力を受ける事はない(力は相互作用)。

4) 物体の運動は、初期条件(ある時刻\( t_0 \)の位置\( x_0 \)と速度\( \upsilon_0 \))と「その物体に働く力(あるいは力の法則)\( F(t,\upsilon(t),x(t) ) \)」が与えられれば、「運動方程式」を解くことにより、一意的に求めることができる。

なお、このような「質量」や「力」の意味(定義)や単位は、国際的に国際標準単位系(SI)という形で採用されており「文明国」では全て、この意味・この単位で、「質量」や「力」を扱います(当然日本でもそうです)。結果だけでは多分意味がわからないと思いますので、まず、この中の1)~3)について、動画「運動の3法則の意味 動画(231MB43分)」で詳しく説明します。

運動の3法則の意味 動画(231MB43分)


ここまで、何となく分かりましたか? では次回は、

4) 物体の運動は、初期条件(ある時刻\( t_0 \)の位置\( x_0 \)と速度\( \upsilon_0 \))と「その物体に働く力(あるいは力の法則)\( F(t,\upsilon(t),x(t) ) \)」が与えられれば、「運動方程式」を解くことにより、一意的に求めることができる。

について説明します。

では、今日は、このへんで終わります。