「運動方程式」は数学的には「2階微分方程式」であり、積分(無限に小さい変化を無限に足し合わせる作業)を2回すると「運動は解ける」ことを理解できましたか?
では次に、運動方程式を「1回」積分することを考えます。2回積分したら運動が求まりますので、ちょうど「半分解いた答え」を見てみることに相当します。解き方は何種類かあるので「半分解いた答え」も、解き方の方針によって何種類かあります。詳しい数学の理論(連続群論)を使うと3次元空間での運動方程式には「3通りの半分解いた答えが存在する」ことまで証明できます。今日はそのうち2つを紹介し、次回残りの1つを紹介します。
【時刻tで積分=運動量と力積】
この内容は、Wikipedia( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%9B%E7%A9%8D ) を参考にしても良いです。
まず、ニュートンの第2法則=運動方程式から出発します。 \[ m \frac{d \upsilon (t)}{dt} = F(t, \upsilon(t),x(t)) \] この式を、両辺\(t\)で積分します。 \[ \int_{t_1}^{t_2}{ m \frac{d \upsilon (t)}{dt} } dt =\int_{t_1}^{t_2}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dt \] 微分は割り算、積分の記号の最後に付いてる\( dt \)は掛け算、と言うことを思い出して、左辺を計算します。 \[ \int_{t_1}^{t_2}{ m d\upsilon (t) } = \int_{t_1}^{t_2}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dt \] \[ m \int_{t_1}^{t_2}{ d\upsilon (t) } = \int_{t_1}^{t_2}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dt \] \[ m \upsilon (t_2) -m \upsilon (t_1) = \int_{t_1}^{t_2}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dt \] 時刻\( t_1 \)のときの\( m \upsilon \)つまり \( m \upsilon (t_1)\) と、時刻\( t_2 \)のときの\( m \upsilon \)つまり\( m \upsilon (t_2)\)の差が、右辺の量、つまり力\( F \)に、力が働いている短い時間\( dt \)を掛けた値を、時刻\( t_1 \) から時刻\(t_2 \)まで足したもの\( \int_{t_1}^{t_2}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dt\)に等しい、という関係が得られました。 そこで\( m \upsilon \)を運動量と名前をつけて呼び\( p \)と書くことにします。また右辺の\( \int_{t_1}^{t_2}{ F(t,\upsilon(t),x(t))} dt\)は、力と時間を掛けたもの(を小さく分けて足し上げたもの)だから、力積(りきせき)と呼ぶことにします。また、実際の運動によるその時の位置や速度にも関係するかもしれませんが、実際の運動が決まっていれば、その運動を前提とすれば、結局力は時刻によって決まっていますので、\( \int_{t_1}^{t_2}{ F(t)} dt\) と省略して書くことにします。力積は、「ある時刻に働く力を、横軸を時間、縦軸を力のグラフで表すと、力のグラフの\( t_1\)から\( t_2\)までの部分の面積」と捉えることもできます。
すると、「運動量の差は、その間にその物体に働いた力積に等しい」と、表現することができます。これを「運動量と力積の関係」と呼びます。 \[ p(t_2) - p(t_1) =\int_{t_1}^{t_2}{ F(t)} dt, ここで p(t)=m \upsilon(t).\] また、もし力積が0であれば、運動量は変化しない(1つの物体の場合の運動量保存則)ということもわかります。これは「運動方程式を半分解いた答え」の1つです。
例えば、「飛んでるボールをキャッチする」同じことですがもう少し過激な例(^^;としては「飛んでくるパンチ(ゲンコツ)を、顔で受ける(思いっきり殴られる(^^;)」でも良いです。どうしたらうまく「ボールをキャッチ」できるか、どうしたら「殴られてもダメージが少ないか(喧嘩ではなく「ボクシング」を思い浮かべてください(^^;)」という問題です。
ボールが到着する直前の時刻を\(t_1 \)、速度は\( \upsilon(t_1)\)ボールをキャッチしボールが手の中で停止した時刻を\( t_2 \)速度は(停止ですから)0とします。その間のボールの運動量の差は\( m\upsilon(t_1)- 0 = m\upsilon(t_1)\)になります。時刻\( t \)にボールに(手から)かかる力を\( F(t) \)とすれば、ボールに掛かる力積と運動量の関係から、\[ m \upsilon(t_1) = \int_{t_1}^{t_2}{ F(t) } dt \]となります。
ボールに(手から)かかる力は、手に(ボールから)掛かる力と(向きは逆ですが)大きさは同じです。手にかかる力はキャッチの仕方で「長い時間(時間いっぱい)掛けて」をかけることも「短時間に集中して」掛けることもできますが、停止するまでの「時間と力の積が同じ」になります。それが運動量と力積の法則です。すると、働く時間が短ければ大きな力、働く時間が長ければ小さな力になることがわかります。
つまりボールが手に触れてから「長い時間を掛けて」キャッチすると、手にかかる力は小さく、「短い時間で」キャッチすると手にかかる力は大きくなることがわかります。手にかかる力が小さい方が楽ですから、上手い人は「一気につかまないで、長い時間をかけて(腕を引きながら)」ボールを掴みます。同じことは、ボクシングでも言えます。歯を食いしばってパンチを(短時間で)受けると力(衝撃)が強く、長い時間を掛けて(受け流すように)パンチを受けると、力(衝撃)が小さくなります。
このような理解が「運動方程式を半分解いた答え」から得られることを知っていただけたらよいと思います
こちらは、適切な(初等的でかつ正確な)説明、ネット上に殆ど無いですね(^^;
(本来3次元の運動なので)難しく説明しすぎているか(バリバリ大学理系向き)、あるいは初等的だけど不十分な説明の物(中学~高校生向き)とか.... 先ほどは運動方程式を時刻\( t \)で積分して「運動量と力積」の関係が導出されましたが、今度は、運動方程式を、位置\( x \)で積分してみます。その結果得られるのが「仕事とエネルギー」です。
以下、1次元運動(直線運動)の場合で説明しますが「詳しい式変形は、無理なら追えなくてもかまいません」。にもかかわらず皆さんに提示するのは「運動方程式から導出される」ことを知っていただくためです。
【位置 \( x \) で積分=仕事とエネルギー】まず、ニュートンの第2法則=運動方程式から出発します。 \[ m \frac{d \upsilon (t)}{dt} = F(t, \upsilon(t),x(t)) \] この式を、両辺 \( x \)で積分します。足し算する範囲は一般的に(1) (2) と書くことにし、具体的に位置で書くなら\( x_1,x_2 \)時刻で書くなら\( t_1,t_2 \),速度で書くなら\( \upsilon_1,\upsilon_2 \)と書くことにします。 \[ \int_{(1)}^{(2)}{ m \frac{d \upsilon (t)}{dt} } dx = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] \( dx \) は位置\( x(t) \)の変化量ですから\( dx(t) \)と書いても\( dx \)と書いても、同じものを表していますので、適宜誤解を生まない範囲で書き方を変えます。速度も同様に\( (t) \)を、明示的に描いたり省略して書いたりします。 また、微分は割り算、積分の記号の最後に付いてる\( dx \)は掛け算であることを思い出してください。
左辺の「分数の」計算します。 \[ \int_{(1)}^{(t2)}{ m \frac{d \upsilon (t)}{dt} } dx = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] \[ m \int_{(1)}^{(2)}{d\upsilon (t) \frac{dx}{dt} } = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] \[ m \int_{(1)}^{(2)}{d\upsilon (t) \frac{dx(t)}{dt} } = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] \[ m \int_{(1)}^{(2)}{\frac{dx(t)}{dt} d\upsilon (t) } = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] ここで、速度は位置の時間微分、\( \frac{dx(t)} {dt}=\upsilon (t) \)であったことを思い出すと、 \[ m \int_{(1)}^{(2)}{ \upsilon (t) d\upsilon (t) } = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] 左辺は時刻\( t \)があからさまには含まれていないので、、\( \upsilon (t) \)を\( \upsilon \)と省略して書き、和を取る範囲を\( \upsilon \)で表し、\( \upsilon _1\), \( \upsilon _2\)と書けば、 \[ m \int_{\upsilon _1}^{\upsilon_2}{ \upsilon d\upsilon } = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] となります。左辺は \( \upsilon \)、を \( \upsilon \)で積分するだけで、これは積分公式で\( \frac{1}{2} \upsilon ^2 \) になりますから、 \[ m ( \frac{1}{2} { \upsilon_2 }^2 - \frac{1}{2} {\upsilon_1 }^2 ) = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] \[ \frac{1}{2}m{ \upsilon_2 }^2 - \frac{1}{2}m {\upsilon_1 }^2 = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx \] となります。中身はちょっと違いますが、時刻で積分した時の「運動量と力積の関係」と似た式が得られました。そこで \( \frac{1}{2}m \upsilon(t)^2 \)という量を導入し、これを「運動エネルギー」と呼び、\( K \) と書くことにします。また、右辺の量を「(1)から(2)の間に行われた仕事」とよび \( W_{1~2} \) と書くことにします。この「仕事」は「働く力\(F\)とその間に移動した距離 \(dx\) の積」を、(1)から(2)の範囲で足し合わせた量の意味です。 \[ K_2 - K_1 = W_{1~2} ,\] \[ ここでK= \frac{1}{2}m {\upsilon }^2 : 運動エネルギー, \] \[ W_{1~2} = \int_{(1)}^{(2)}{ F(t, \upsilon(t),x(t))} dx : (1)から(2)の間に行われた仕事 \] となります。つまり、「運動エネルギーの差は、その間に行われた仕事に等しい」という法則が得られます。これは「運動方程式を半分解いた答え」の1つです。
かなり難しかったですね(^^; でも「運動方程式を位置で積分すると、運動エネルギーとか仕事と言う量が自動的に出てくる(定義される)」と言うことだけは、理解していただけたのではないかと思います。具体的な計算式は「その証拠をお見せしただけ」です。
でも、もう少し、先に進みます(^^;
ここで、「力が位置だけで決まる場合」を考えます。つまり、\( F(t, \upsilon(t),x(t)) = F(x) \) と書けるとき。その場合には、 \[ W_{1~2} = \int_{(1)}^{(2)}{ F( x )} dx \] となりますので、右辺は位置 \( x\) だけで決まる量になります。そして、もし関数\(F(x) \)が、ある関数(ここではある関数を\( -U(x) \) と書きます )の傾きで表せる場合、つまり、 \[ F(x)= - \frac{dU(x)}{dx} \] と書ける場合には、右辺の積分は簡単に計算でき(微分と積分は逆演算)、 \[ W_{1~2} = \int_{(1)}^{(2)}{ -\frac{dU(x)}{dx}dx } = ( -U(x_2) ) - ( -U(x_1) ) = U(x_1) - U(x_2) \] となります。よって、 \[K_2 - K_1= W_{1~2} = U(x_1) - U(x_2),\] \[K_2 +U(x_2)= K_1 +U(x_1)\] が得られます。つまり、「運動エネルギー\(K \)と関数\(U \)の和は、一定:(1)の時と(2)の時で等しい」ことが分かります。ここで導入した関数\(U(x) \)は、その傾きで力の大きさを表し「ポテンシャル関数」と呼ばれますが、その値は運動エネルギーと足すことができるので「エネルギー」の一種と捉え、また位置\(K \)だけで決まる量なので「位置エネルギー」とも呼ばれます。
結果をまとめます。\( K=\frac{1}{2}m {\upsilon }^2 \)を運動エネルギーと呼ぶ。物体に働く力が位置だけで決まり、\( F = - \frac{dU(x)}{dx} \)と表せるとき、関数\(U(x) \)をポテンシャルあるいは位置エネルギーと呼ぶ。また、運動エネルギーと位置エネルギーの和\( K+U \)を、\( E \)と書き、これを「全エネルギー(力学的エネルギー)」と呼ぶ。全エネルギー\( E \)は、(時刻が変化し、位置や速度、運動エネルギーや位置エネルギーは変化しても)一定となります。これを「エネルギー保存則」と呼びます。
ここまで、むっちゃくちゃ難しかったですね(^^;;;;
でも、日ごろ使う「エネルギー」言葉、元々はこういう意味で、それ以外の意味は無いのです。そして、エネルギー保存則も「ニュートンの運動の3法則(基本法則)から(ある条件は付きますが)導出されるもの」、つまり、「運動方程式を半分解いた答え」の1つです。そのことだけ理解していただければ良いと思っています。
難しい数式が続きましたので、「エネルギー保存則」を使った、1つ具体的な問題を考えてみます。
地球上の普通に重力が働いている場合の運動を考えます。上向きに\( x\)軸と取ると、力は下向きですから\( F = -m g \)となります。ここで\(m,g\)はそれぞれ物体の質量、重力加速度(9.8m/s)であり、定数です。これは、\( U(x) = m g x \)という関数を使うと、
\[ -\frac{d U(x)}{dx} =-\frac{d(m g x) }{dx}= -mg \]
となりますから、この物体に働く重力\(F\)と等しくなっています。つまり、\(U(x)\)は重力の場合のポテンシャル関数=位置エネルギーの式になります。すると、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定ですから、
\[ \frac{1}{2}m \upsilon^2+mgx =E(一定) \]
という式が成り立ちます。
では、ここで、「棒高跳び」の問題を考えます。棒高跳びは「速く走って、棒を突いて、棒のしなりを利用して、高く飛びあがる」競技です。棒自体は(エンジンなどついていないので)エネルギーを生み出しませんので「エネルギー保存則」が成り立ちます。ここで跳ぶ前を(1)、一番高く飛び上がったところを(2)とします。それぞれの場所での速さや位置は、添え字で表します。すると、
\[ \frac{1}{2}m {\upsilon_2}^2+m g x_2 = \frac{1}{2}m {\upsilon_1}^2+m g x_1 =E(一定) \]
ここで、跳ぶ前の高さを0, 頂点での速さを0(頂点では一瞬とまりますよね) とすると、\(X_1=0,\upsilon_2=0\)なので、\[ m g x_2 = \frac{1}{2}m {\upsilon_1}^2 \]
\[ x_2 = \frac { {\upsilon_1}^2 } {2 g} \]
となります。質量(∝体重)に無関係で、跳ぶ前の速さ(跳ぶ直前の助走の速さ)だけに依存する式になっているのは面白いですね。重力位加速度\( g \)は、およそ9.8m/sですから、およそ10として概算していきます。すると、単位も明記して、
\[ x_2 {\rm[m]}= \frac { {\upsilon_1{\rm[m/s]}}^2 } {20{\rm[m/s^2]}} \]
という式が得られます。
オリンピックに出るようなトップアスリートの場合、100m10秒程度で走りますので、速度はおよそ秒速10m。つまり\( \upsilon_1=10 \)くらいなので、これを代入すれば、右辺の分子その2乗だからおよそ100で分母は20だから、\( x_2=5\)つまり、5mほど跳べることが分かります(実際トップアスリートはそのくらい跳びます)。ここで、「あなたの走る速さ」で何m跳べるか、計算してみください。
100m走のタイム(秒数)を知っていれば100/タイム、50m走のタイムを知っていれば50/タイムで、あなたの走る速度(秒速)を求め、上の式に代入して、「棒高跳びで跳べる高さ」を求めてみてください。「驚くような数値」が出るかもしれませんが、正しく計算できていれば、それが、あなたの走る速度で、棒高跳びで跳べる高さの限界です。
ちなみに、100m20秒、あるいは50m10秒なら、どんなによくしなる長い棒を使っても、跳べる高さは、1mちょっとが限界になります。
こんな問題が、運動方程式を直接解かなくても、「運動方程式を半分解いた答えであるエネルギー保存則から」解ける、ということを知っていただけたらよいと思います。
ニュートンの運動の3法則(基本法則)、特にその中の運動方程式を時刻で積分(半分解く)ことにより、「運動量と力積の関係」が、運動方程式を位置で積分(半分解く)ことにより「エネルギーと仕事の関係」や「エネルギー保存則」が得られました。
このように「半分解いた答え」から具体的な物体の運動を考察すると、運動方程式から直接考察するよりも見通し良く現象を捉えることもできます。
今回は「どのように導出できるのかを、皆さんに見ていただく為に」、数式をその変形も含めて全部提示しましたが、それを理解するのはかなり数学が好きで得意でないと厳しいと思いますので、この授業では、それを覚える必要もまた変形などを追えない場所があってもかまいません。大切なことは「ニュートンの運動の3法則(基本法則)から、これらの法則が導出される」という認識を持つことです。
次回は、残る1つ「角運動量を力のモーメント、角運動量保存則」を説明しますが、これは皆さんに馴染みのない数学も使うことになるので、次回は(雰囲気だけ捉えられば良いので、難しい部分を変に見返すことの無いよう(^^;)動画形式で「軽く」紹介したいとおもます。合わせて「回っているコマはなぜ倒れない?」も説明する予定です。
では、今日は、このへんで終わります。