まず最初に、(訳わからん式が並びますが)、電磁力(電磁現象)を記述する「基本法則」に相当するものを、全て示しますので「見て」ください。かなり高度な数学の記号を使っていますが... 実は本当に高度な数学であり、物理や数学を専門に学ぶ大学生でも多分2年以上の勉強が必要です(^^; ですから理工学部系の大学を卒業していても「全く知らない、見たことも聞いたこともない」という人も、結構いるのではないかと思います(小・中学校の理科の先生くらいだと、見たことない人の方が多いかも。高校の物理の先生なら一応全部知っておいて欲しいところですが...)。
しかし「中身の意味は、数学を知らないファラデーが考えた電気力線の法則と本質的に同じ」ですから、細かい計算方法などにこだわらなければ、「大体のイメージ」を掴むことは可能と思います。まず最初に(最初のページは予告編的な意味で)「全部」提示した上で、後からその式で表現している法則の「イメージ」を説明していきたいと思います。なお、必要に応じて式はまた書きますから覚える必要はないと思います(授業と無関係に必要があれば、Web検索で出てきます)。
\[ \vec{F}_A ( t ) = q_{A} ( \vec{E}( \vec{r}_A,t ) + \vec{ \upsilon} _A (t) \times \vec{B} (\vec{r}_A,t ) ) \]「電場\(E\)」は、物体Aに働く電気力を、物体Aの電荷量(電気の量の意味です)で割ったものと「定義」する。この量は物体Aの電荷量とは無関係になる。同様に磁場と比例する「磁束密度(磁力線に対応するもの)」が、磁気力からこの式で定義される(詳細は後ほど)。
電磁現象を記述する「単位系(SI単位系)の関係」で、電束密度\(D\)と磁場\(H\)を \[ \vec{D}( \vec{r},t )= \varepsilon_0 \vec{E}( \vec{r},t ) \] \[ \vec{B}( \vec{r},t )= \mu_0 \vec{H}( \vec{r},t ) \]のように定義して、導入します。なお、\( \mu_0 \)は真空透磁率と呼ばれ、値は \( 1.26 \times 10^{-6} \rm[NA^{-2}]\)、\( \varepsilon_0 \)は真空誘電率と呼ばれ、値は \( 8.85 \times 10^{-12} \rm[ Fm^{-1}]\)です。定数を掛けて単位を変えただけなので、電場\(E\) と電束密度\(D\)は同じようなもの、磁場\(H\) と磁束密度\(B\)は同じようなもの、と捉えてください。
\[ {\rm div }\vec{D}( \vec{r},t )= \rho ( \vec{r},t ) \] \[ {\rm div }\vec{B}( \vec{r},t )= 0 \] \[ {\rm rot}\vec{E}( \vec{r},t )= - \frac{\partial \vec{B} (\vec{r},t) } {\partial t} \] \[ {\rm rot}\vec{H}( \vec{r},t )= \vec{J} (\vec{r},t) + \frac{\partial \vec{D} (\vec{r},t) } {\partial t} \] ここで、電荷密度\(\rho ( \vec{r},t )\)は「ある場所に単位体積あたりどのくらいの電荷があるかを表す量」で、電流密度\(\vec{J} ( \vec{r},t )\)は、ある場所に単位体積あたりどのくらいの「電荷の流れ」があるかを表す量であり、Maxwell方程式は、電荷密度\(\rho ( \vec{r},t )\)と、電流密度\(\vec{J} (\vec{r},t)\)から、電場(電束密度)、磁場(磁束密度))を求める法則です。
まず数式で使われている「記号の意味」をまとめておきます。
・位置を\( \vec{r}\)で表します。\(x,y,z\)3つの数値の組みで表しても同じです。 \[ \vec{r} = \left( \begin{array}{r} x \\ y \\ z \\ \end{array} \right) \]
・電場や磁場などの「位置に対応したベクトル(=ベクトル場)」の表し方です。一般に、ベクトル場\( \vec{A}(\vec{r},t)\)を成分で表すと、 \[ \vec{A}(\vec{r},t) = \left( \begin{array}{r} A_x(\vec{r},t) \\ A_y(\vec{r},t) \\ A_z(\vec{r},t) \\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{r} A_x(x,y,z,t) \\ A_y(x,y,z,t) \\ A_z(x,y,z,t) \\ \end{array} \right) \]となります。
「電場や磁場のようなベクトル場」は、流れのようなイメージを持つと良いです(実際、流体(流れるもの)力学と同じ数学(数式)になります)。また、電気力線や磁力線は、流れに添った線(流線)のようなイメージを持つと良いです。そして、電場や磁場の「渦」や「湧き出し」が電磁法則の理解に必要になりますので、これを数学的に表現する演算と記号を紹介しておきます。

また、「微分記号のベクトル」も必要になります。\(x\)だけ変数とみなして(他の\(y,z,t\)などの変数は定数と同じに扱って)微分することを偏微分(へんびぶん)と言います。記号は( \(d \)から\( \partial\) に) 変わっていますが多変数関数でも1変数だけに注目し「1変数の普通の微分と同じ」という意味です。与えられた関数を「\(x\)で偏微分した答えを\(x\)成分、\(y\)で偏微分した答えを\(y\)成分、\(z\)で偏微分した答えを\(z\)成分に持つ、ベクトルを求めなさい」という演算を、\( \nabla \)(nabla:ナブラと読みます。日本語ではベクトル微分演算子と呼ぶ場合もあります)と表します。\[ \nabla= \left( \begin{array}{r} \frac{\partial}{\partial x} \\ \frac{\partial}{\partial y} \\ \frac{\partial}{\partial z} \\ \end{array} \right) \]
・\( \nabla \)とベクトル場の内積を定義します。
\[ {\rm div }\vec{A}( \vec{r},t )=\nabla \cdot \vec{A}( \vec{r},t ) = \frac{\partial}{\partial x} A_x(x,y,z,t) +\frac{\partial}{\partial y} A_y(x,y,z,t)+\frac{\partial}{\partial z} A_z(x,y,z,t) \]

これは幾何学的には「湧き出し」を意味します。電荷から電気力線が「湧き出す」イメージを数学で正確に記述したものになります。湧き出すことを数学の専門用語で「発散(divergence)」と言います。
・\( \nabla \)とベクトル場のベクトル積(外積)を定義します。
\[ {\rm rot }\vec{A}( \vec{r},t )=\nabla \times \vec{A}( \vec{r},t ) = \left( \begin{array}{r} \frac{\partial } {\partial y} A_z(x,y,z,t) - \frac{\partial } {\partial z} A_y(x,y,z,t) \\ \frac{\partial}{\partial z} A_x(x,y,z,t)
- \frac{\partial } {\partial x} A_z(x,y,z,t) \\ \frac{\partial} {\partial x} A_y(x,y,z,t) - \frac{\partial } {\partial y} A_x(x,y,z,t) \\ \end{array} \right) \]
これは幾何学的には「渦」を意味します。電気力線や磁力線などで表されるベクトル場が「渦になって、くるっと回る」イメージを数学で正確に記述したものになります。渦を数学の専門用語で「回転(rotation)」と言います。
これで「全て」です(全ての電磁法則や電磁現象は、ここから導出できます)。
これを一気に理解することは難しいので、まず簡単な「電気力しか無い場合(磁気力が働かない場合)」から、見ていきましょう。
まず、全貌についてのイメージをつかむため「磁気力が働いておらず、電気力のみの場合」を考えます。
前のページでBとかHとか入っている部分を全部0とみなして式を簡単にておいきます。
【電場\(E\) と磁束密度\(B\)の定義(ローレンツの力の式)】\[ \vec{F}_A ( t ) = q_{A} \vec{E}( \vec{r}_A,t ) \]物体Aが電気「力」を受けているかどうかは、力学的な測定で分かります。今ある場所に電荷\(q_A\)を持つ物体を置いたとき、その物体に働いた電気力が\( \vec{F}_A \)であれば、その時、その場所の電場は、\[ \vec{E}( \vec{r}_A,t ) = \frac{\vec{F}_A ( t )}{q_A} \]となります。つまり、「電場\(E\)」は、物体Aに働く電気力を、物体Aの電荷量(電気の量の意味です)で割ったものと「定義」する。この量は物体Aの電荷量とは無関係になる。ということです。
また、場所を変えていけば任意の場所の電場分かりますし「実験事実として、電場はそこに置く物体(の電荷)に依存しない」ことが知られています。論理的に問題となるのは、電荷を置かない場合つまり\(q_A)\)が0の時でも電場があるのか?(数学的には0/0で不定)という問題ですが、「ファラデーや、マックスウェルは、電荷によらないのだから、たぶん電荷が無くても電場がある」と考え、のちにそれが実証されます。
# 電場は「空間(場所)が持つ、電気的な性質」です。決して「電気力が働く範囲ではない」ですので注意してください(そう間違えている中学・高校の教科書・参考書もあります)。
電磁現象を記述する「単位系(SI単位系)の関係」で、電束密度\(D\)と磁場\(H\)を\[ \vec{D}( \vec{r},t )= \varepsilon_0 \vec{E}( \vec{r},t ) \]のように定義して、導入します。なお、\( \varepsilon_0 \)は真空誘電率と呼ばれ、値は \( 8.85 \times 10^{-12} \rm[ Fm^{-1}]\)です。定数を掛けて単位を変えただけなので、電場\(E\) と電束密度\(D\)は同じようなものと捉えて差し支えありません。なお、後で説明しますが「電気力線の込み方と直接対応するのが電束密度」であり、これと「電気力と直接関係する電場」とは比例している、という「表現」になっています。
Maxwel方程式 \(B=0\),\(H=0\) を代入し「電気力のみ働く場合」に限定して、式簡単化してみてみます。
\[ {\rm div }\vec{D}( \vec{r},t )= \rho ( \vec{r},t ) \]
この式は「電荷(密度)がある場所からは、電場が(電気力線が)湧き出す」という意味です。この法則を「ガウスの法則」と呼ぶ場合があります。点電荷の場合、1点にのみ電荷がありそれ以外の場所に電荷が無ければ、電気力線は1点から湧き出します。また、\[ {\rm rot}\vec{E}( \vec{r},t )= - \frac{\partial \vec{B} (\vec{r},t) } {\partial t} =0 \]は、「電場(電気力線)は、渦が無い」という意味で、電荷から(電荷の周りをぐるぐる回らずに)まっすぐに伸びていく、という意味です。つまり、電気力線は右図のようになり、電荷に近いところでは電気力線が混んでいるため「電気力が大きい」、遠いところでは電気力線が混んでいない(線の密度が小さい)ため、弱く成ります。なお、球の表面積は半径の2乗に比例し、遠くになれば同じ本数の電気力線が広い面積で分けられますので、線の密度は距離の2乗に反比例します。それが「クーロンの法則」と一致します。なお、定性的に考察しましたが、式変形をして定量的に扱えば、完全にクーロンの法則を「導出」することができます。つまり電気力の法則は、この「ガウスの法則」から導出できる法則であり、基本法則ではないという認識に至ります。
では次に、(電気力が無く)、磁気力だけの場合を見ていきます。まず、最初に紹介した基本法則のうち、磁気力に関するものだけ抜き出してみます(電気力に関する量は全て0とする)。
\[ \vec{F}_A ( t ) = q_{A} ( \vec{ \upsilon} _A (t) \times \vec{B} (\vec{r}_A,t ) ) \] これが磁束密度(磁場と比例するもの)の「定義」ですが、やや複雑なので後で説明します。磁束密度は「中学校理科で出てきた磁力線で表せるようなもの」というなんとなくの理解で、とりあえず進みましょう。
電磁現象を記述する「単位系(SI単位系)の関係」で、電束密度\(D\)と磁場\(H\)を \[ \vec{B}( \vec{r},t )= \mu_0 \vec{H}( \vec{r},t ) \] のように定義して、導入します。なお、\( \mu_0 \)は真空透磁率と呼ばれ、値は \( 1.26 \times 10^{-6} \rm[NA^{-2}]\)です。定数を掛けて単位を変えただけなので、磁場\(H\) と磁束密度\(B\)は同じようなもの、と捉えて差し支えありません。
\[ {\rm div }\vec{B}( \vec{r},t )= 0 \] \[ {\rm rot}\vec{H}( \vec{r},t )= \vec{J} (\vec{r},t) \]ここで 電流密度\(\vec{J}( \vec{r},t )\)は、ある場所に単位体積あたりどのくらいの「電荷の流れ」があるかを表す量です。なお「流れ」とは一般に密度に速度を掛けたもので、電流密度は\(\vec{J}( \vec{r},t )=\rho(\vec{r},t) \vec{\upsilon}(\vec{r},t)\)と表すこともできます。
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まず最初の式からその意味を見ていきましょう。
\[ {\rm div }\vec{B}( \vec{r},t )= 0 \]
左辺は「磁束密度(磁力線)の湧き出し」の意味ですから、「磁束密度(磁力線)の湧き出しは無い(0である)」という式になっています。参考までに、電気力の場合は、\( {\rm div }\vec{D}( \vec{r},t )= \rho ( \vec{r},t ) \)であり「電束密度(電気力線)は電荷から湧き出す」=「電気力線は+の電荷から出てーの電荷に入っていく(吸い込まれる)」の意味です。しかし、磁力線の場合には「電気力の電荷(+やー)に相当する量(NやS)は無い」ことを意味しています。
ここで皆さん、思い出しましょう。小学校・中学校で「磁石にはN極とS極がある」と教わったと思いますが、皆さん「N極」や「S極」を見たことがありますか? 例えば電気。摩擦を起こすと「+とーの電気」が生まれそれが異なる物体にたまると「+だけが多くたまったもの(A)」と「ーだけが多くたまったもの(B)」ができ、AとBを近づけると引き合う(電気力が働く)ことを、体験していると思います。これが「電荷(+やーの電気)」です。しかし、磁石で同じようなことができますか? つまりなんらかの方法で「Nだけが多くたまったもの」「Sだけが多くたまったもの」ができるか、という問題です。これができれば「電気の+ーと同じような極が、磁力に対しても存在する」ことになります。
実は... 昔から数多くの物理学者が、「Nだけの磁石やSだけの磁石(Magnetic Monopole:モノポール)」を探し続けていますが、まだ1つも見つかっていません(見つけたら即座にノーベル賞確実の大発見になります)。ですから、少なくとも人類が経験している自然現象の範囲内ではモノポールは存在しない=「N極やS極は存在しない」と考えて良いと思います。これが、この式の意味です。
皆さん、中学校理科で「磁力線は磁石のN極から出てS極に入っていく(吸い込まれる)」と教わったと思います。でもこれは「嘘(あるいは誤り)」です。「電気力線は+の電荷から出てーの電荷に入っていく(吸い込まれる)」は、正しいです。

「これって電磁石の場合ですよね?永久磁石はどうなの?」という疑問があるかもしれませんね。実は「永久磁石は、原子・分子レベルあるいは素粒子レベルの電磁石」なんです。原子の中で電子が原子核の周りを回るための電流が生まれ電磁石になる場合や、電子や原子核自身が自転するために電磁石になったりします。この辺の仕組みが解明されたのは20世紀になってからですが、いずれにせよ「我々の周りにある永久磁石」は、「全て電磁石」であり、本質的なN極S極という磁石(モノポール)は、1つも見つかっていません。
では「磁石のN極やS極と呼んでいたものは、なんなの?」という疑問があるかも。これは「見かけ」なんです。例えば電磁石の「磁石と思っている部分」を箱で隠します。その部分は中を見ないようにします。すると、磁力線が湧き出しているように「見える」場所と、磁力線が吸い込まれているように「見える」場所が両端にできます。このように、ある部分を隠した時に「見かけ上湧き出しているように見える場所」を「N」と呼び、「見かけ上吸い込まれているように見える場所」を「S」と呼びます。つまり、「N極やS極は、見かけ(実在ではない)」です。その証拠に、磁石を2つに切っても「N極だけやS極だけにはならず」、「NとS」「NとS」の2つの磁石になります。磁力線の図の、中心部の電磁石の部分を、「全部隠す」、「左右2つに分けて隠し、真ん中を少し隠さずに開ける」ことをしてみてください。両方とも「磁力線は同じ」ですが「隠された場所の端から、磁力線が湧き出ているように見える場所」は、変わりますよね?(隠していた場所が違うわけですから)。これが「磁石を割った時に、N極とS極が新たに生まれ(るように見え)、Sだけの磁石やNだけの磁石にならない」理由です。
多岐に渡り、分量も多いですね(^^;
では、今日はここまでにして、ここまでのことを、一旦まとめます。
・電荷があると電気力線(≒電束密度≒電場)が湧き出すし、電荷が無い場所では電気力線は切れたり消えたりしない(ガウスの法則)。なお、1つの点電荷(点状の電荷)から湧き出す電気力線の混み方(=電束密度)は、距離の2乗に反比例する。
・電荷をある場所におくと、その場所の電場に電荷を掛けた大きさの電気力が働く。
・磁力線には湧き出しが無い(N極やS極は存在しない)。磁力線は必ず閉曲線(ループ)となる。
・電流があると、その周りに磁力線の渦(磁力線のループ)ができる。磁力線の渦の向きは「右手」でわかる(右手を、親指だけ立てて軽く握り、電流の向きに親指を合わせた時、人差し指から小指が指している向きが、磁力線のループの向き)(アンペールの法則)。
・永久磁石と思っているものは(原子・分子・素粒子レベルの)電磁石。磁力線を全て見ずに「ある部分を隠して見る」と、「見かけの湧き出し」「見かけの吸い込み」が現れる。これをN極、S極と呼ぶ、つまり、磁石のNやSは「見かけの概念」であり、実在するものでは無い。
次回、「磁力と磁束密度の定義」、「電磁誘導の法則」、「変位電流の法則と電磁波」...などの話に進み、最後に「電磁現象全て」の話としてまとめていきたいと思います。なお、電気力は如何に「強い」のか、そしてなぜ身近な現象でその「強さ」が感じられる例が少ないのか、また筋肉が縮むのは電気力との意味は? などにも触れるつもりです。
では、今日は、このへんで終わります。