4.足し算(線分の分割と定積分、微分積分学の基本定理、定積分と不定積分(原始関数))

まず、最初に紹介した動画を、もう一度見て、イメージを作りましょう。 既に前半の「微分」は、「グラフの傾きで割り算」という意味であり、無限小量の「割り算」という理解で、全ての微分に関することは全て理解出来、必要があれば式も導出できる(計算するだけならwxMaximaを使えば良い。使い方は後ほど紹介)。ということが分かっていると思います。今回はその後の「線分を細かく分け...」というところを、この後説明していきます。 ---微分・積分 動画(250MB45分)---

では、この動画の後半の部分を、詳しく説明します。


4-1. 数直線の分割と足し算(定積分)

横軸に\(y\)を取り、\(y=a\)から\(y=b\)の範囲を分割します(動画では\(a\)を\(y_1\),\(b\)を\(y_2\) としていますが、今回はこれを分ける話もしていきますので、記号を変えました)。もちろん、線分の長さは\(b-a\)です。この線分を、細かく分割します。分割点の\(y\)の値を\(y_k : k=1,2,3...\)とおくことにします。そして、分割点の間の距離を\( dy_k \) とおくことにします。この記号を使うと、\(y_0=a, y_n=b \)で、分割点は\(n\)個、分割数(区間の数)は\(n-1\)個になります。つまり、 \[y_0=a, y_1=y_0+dy_0, y_2=y_1+dy_1, ... y_k=y_{k-1} +dy_{k-1} ....y_n=y_{n-1}+dy_{n-1}=b \] という意味です。言い換えると、 \[dy_0=y_1-y_0, dy_1=y_2-y_1, ...  , dy_{k-1}=y_{k}-y_{k-1},... , dy_{n-1}=y_{n}-y_{n-1} =b-{y_n-1} \] ということです。また、 ここで、分割した小さな線分を全部寄せ集めるということは、 \[ \sum_{k=1}^{n-1}dy_k=dy_0+dy_1+dy_2+....dy_{n-1} \] という意味です。\(dy_{k-1}=y_{k}-y_{k-1} \)ですから、この式を代入して、実際に、この「和」を計算してみます。左辺は、何を計算しているのかを覚えておくためにそのままにしておき、右辺には具体的に各項を書き、この先、変形していきます。 \[ \sum_{k=1}^{n-1}dy_k= (y_1-y_0)+(y_2-y_1)+... +(y_{n-1}-y_{n-2})+(y_{n}-y_{n-1}) \] このままの式でも見抜ける方多いかもしれませんが、「右辺の和の順番を入れ替える」と、 \[ \sum_{k=1}^{n-1}dy_k= (y_{n}-y_{n-1})+(y_{n-1}-y_{n-2}).... + (y_2-y_1)+(y_1-y_0) \] となります。これで見抜ける方が多いと思いますが、ここで括弧を外してみれば、 \[ =\sum_{k=1}^{n-1}dy_k= y_{n}-y_{n-1}+y_{n-1}-y_{n-2} .... + y_2-y_1+y_1-y_0 \] となり、真ん中の+ーが全部打ち消し合って、最初と最後だけになります。つまり、 \[ \sum_{k=1}^{n-1}dy_k= y_{n}-y_0=b-a \] となります。これは分割の仕方によらない(途中の\(y_k\)のとり方によらない)という点が重要です。

このような「無限に沢山の足し算(無限級数の和)」が、簡単に計算できる場合がある、というのが「ライプニッツの」発見でした。 そして、今は分割数を自然数(可算、有限個)としていますが、これを(可算)無限個(n=∞)に分割しても、またさらに連続無限個にしても成り立つ、というのがライプニッツの発見した「定積分」の意味です。 連続無限個に分割した場合には、和(足し算)の記号\( \sum\)を、\(\int \)と書き、「和を取る範囲」を上下に書きましょう。つまり、 \[ \int_{y=a}^{u=b} dy=b-a \] と書きます。この「和を取る」演算を「Integral=統合」と言いますが、これを日本語では何故か「(定)積分」と言います(^^;「積分には、積(掛け算)は、何処に入っていない」ことに気をつけて下さい。分けたものの和ですから、本来は「和分」とでも言うべきもので、実際有限分割の数学では和分と言いますが、無限分割の(日本の)数学では、何故か(Integral:統合=和を取る)の訳語として「積分」という、誤訳に近い用語が、使われています。そして、皆さんの「疑問・誤り」は、たぶんこの誤訳(相応しくない漢字)が生んだ、誤解が基だと思います。

「定積分の記号」は、「和(足し算)」を表している、ということが理解できましたか?「分割して足し上げると、もとに戻る(もとの長さになる)」というだけのことを、厳密に示しただけです(^^;;

4-2.関数の微分と逆問題(原始関数)

数直線\(y\)を分割して足しあげる話をしてきましたが、今、\(y\)が\(x\)により決まる場合、つまり\(y\)が\(x\)の関数である場合に、話を進めましょう。ここでは\(y=F(x)\)の関係があるとします(動画と同じく、大文字の\(F\)を使っておきます)。

ここで、\(x\)を少し(\(dx\))だけ変化させます。すると、yも少し(\(dy\)だけ)変化します。その関係を微分(グラフの傾き=割り算)で書けば、 \[\frac{dy}{dx}=\frac{dF(x)}{dx}=F'(x)\] となります。動画で種明かししていますが、この量を先回りして、小文字の\(f\)で表しておきましょう。つまり、 \[\frac{dy}{dx}=\frac{dF(x)}{dx}=F'(x)=f(x)\] です。関数\(F(x)\)の微分(グラフの傾き)を\(f(x)\)とおきましたので、もし、\(f(x)\)が与えられたときに\(F(x)\)を求めなさい、という問題があれば、それは「微分した答えが\(f(x)\)になる、元の問題\(F(x)\)を求めなさい」という事になります。このように「微分したら答えが***になる、元の関数」を「原始関数」と呼びます。

では「微分はわり算である」ことに注目し、両辺に\(dx\)を掛けて、この式を\(dy\)と\(dx\)の関係、という形が見えるように変形します。 \[ dy=F'(x)dx \] これは、\(x\)と\(y\)が、\(y=F(x)\)という関数関係に有る時の、\(x\)の変化量(\(dx\))と\(y\)の変化量(\(dy\))の関係です。(補足ですが、まだ足していないので積分ではないのですが、この「積」が面積に繋がり、積分の「積」という漢字(誤訳に基づく誤解)が生まれる元になります。ここまで「積分」は一切出てきていません。微分の逆は出てきましたが、これは「原始関数」と呼びます。また、\(x\)の変化\(dx\)と\(y\)の変化\(dy\)の関係式に出てくる係数が\(F'(x)\)となっているので、この傾きを表す量を、正確には「微分係数」と呼びます。なおこの授業では(そして殆ど全ての日本語の数学の本では)この微分係数を略して微分、と呼んでいます。 )。

4-3.関数の積分、微分積分学の基本定理

ではいよいよ、山場に向かいます。4-1)で定義した積分(integral=統合=和を取る)と、4-2)で整理した変化の比率(微分)の関係です。まず、この節で使う、今まで出てきた記号や式を纏めておきます。

\[ y=F(x)\\ \frac{dy}{dx}=\frac{dF(x)}{dx}=F'(x)=f(x)\\ dy=F'(x)dx\\ \int_{y=a}^{y=b} dy=b-a \] なお、\(a,b\)は動画と同じになるよう、「\(a=y_1  ~  b=y_2\)」と表すことにしましょう。なお、同じ範囲を\(x\)で表す場合には\(x_1,x_2\)動画と同じく、という記号にします。

 上記の一番下の式に、その手前の式を代入すると、 \[ \int_{y=y_{1}}^{y=y_2}F'(x)dx=y_2-y_1 \] 和を取る範囲を、\(y\)ではなく\(x\)で表せば、 \[ \int_{x=x_{1}}^{x=x_2}F'(x)dx=y_2-y_1 \]

とも書けますし、\(y=F(x)\)ですから、\(y_2=F(x_2),y_1=F(x_1) \)ですので、 \[ \int_{x=x_{1}}^{x=x_2}F'(x)dx=F(x_2)-F(x_1) \] また、\(F'(x)=f(x)\)としていましたから、 \[ \int_{x=x_{1}}^{x=x_2}f(x)dx=F(x_2)-F(x_1) \] ここで\(\frac{dF(x)}{dx}=f(x)\) つまり、\(F(x)\)の微分が\(f(x)\)で、逆に\(f(x)\)の原始関数が\(F(x)\)です。 つまり、「関数\(f(x)\)に、\(x\)の無限小分割\(dx\)を掛けたものを、\(x_1~x_2\)の範囲で和をとったもの(つまり小さな短冊の面積を無限に足したもの=この範囲の面積)」は、原始関数の差(\(F(x_2)-F(x_1)\))に等しい(原始関数の差で計算できる)ということが分かります。 これが、ニュートンとライプニッツが独立に発見した「微分積分学の基本定理」です。


4-4.定積分と、原始関数(不定積分)

では、最後に、この微分積分学の基本定理の式をちょっと書き換えて、原始関数を求める(定積分で表す)ことを考えてみましょう。 \[ \int_{x=x_{1}}^{x=x_2}f(x)dx=F(x_2)-F(x_1) \] この式で「和を取る上限」を\(x_2\)という定数ではなく、「変数」にします。紛らわしければ別の記号を使ってもいいですが...まあ多分混乱もないと思うので\(x_2\)を\(x\)と書き、右辺と左辺を入れ替えて書きます。 \[ F(x)-F(x_1)=\int_{x=x_{1}}^{x=x}f(x)dx \] \(x_1\)が決まっている数(定数)ならば\(-F(x_1)\)も、「定数」になりますから、その数を「\(C(積分定数)\)」と書き、右辺に持っていきましょう。すると、 \[ F(x)=\int_{x=x_{1}}^{x=x}f(x)dx+C(積分定数) \] となります。つまり、「原始関数\(F(x)\)を、上限を変数にした定積分で表せる」ことになります。そこでこの「上限を変数にした定積分」を、「和を取る範囲を変数にしたから、和を取る範囲は決まっていない」という意味で「不定積分」と呼び、範囲を省略して書くことにします。つまり、 \[ \int_{x=x_{1}}^{x=x}f(x)dx= \int f(x)dx \] と省略して書く、ということです。この記号を使うと、「原始関数(微分の逆)」は、 \[ F(x)=\int f(x)dx+C(積分定数) \] と「和を取る範囲を変数にした定積分=不定積分」で、書けることになります。定数分の違いをしかないばあいに「同一」とみなせば、原始関数は不定積分に「等しい」です。

これで、動画の内容は全てです。途中面倒な式変形も省略せずに全部詳しく紹介しましたが、これを全部覚える必要はありません。ただ、この説明を「キチンと読んで」その後、もう一回最初にある「動画」を見ると、何を言っているのかが、はっきりと分かるのではないか、と期待しています。そろそろ時間切れの場合には、一旦ここで休憩を入れ、また後で(翌日でもOK)もう一度、動画を見て下さい。今度は動画で述べていることが前よりよく分かると思いますし、その上でもう一度、個々までの式を「さらっと」眺めていただければ、「ああ、そういうこと(^^)」という感覚になっていただけるのではないかなぁ... と期待しています。

では、今日は、このへんで終わります。