7. 円周の長さと円周率の定義、弧度法、円の面積、(球の表面積、球の体積)

今回と、次回にわたり、微積分学の応用として、円の面積、球の表面積、球の体積を求める公式を導出します。(今回提示する教材は、今回及び次回の2回分を想定しています)

考え方としては、複雑な(曲がった)図形を、無限に小さい単純な図形に分解し、その面積や体積を無限に足し合わせることにより、面積や体積を求めようという考え方です。そこで出てくる「無限の足し算」は、微分積分学の基本定理を応用し、原始関数の差で求めれば、簡単に「無限個の和」を求められます。

授業では、皆さんの基礎知識の度合いに応じて、ゆっくり説明していきますので(場合によっては、置換積分の実際的な使い方の例やwxMaximaを使った実際的な積分計算の例も紹介しますので、今回の内容だけでなく、前回までの内容も含めて)、疑問点は質問してください。皆さんの突っ込み次第で、(提示する2回分は)今回だけで終わらない可能性がありますので(というか、そのように想定していますので)、それは次回に回すつもりでいます。もし皆さんの基礎学力や理解度が予想以上で、今回だけで(今回と次回の2回分の予定の)すべて導出が終われば、次回の内容は、その次の内容に変更するかもしれません。

では、計算に入る前に、微積分にかかわらず、計算に必要となる円や球、角度などに関しての基本的な事項をまとめておきます。


7-1. 基本事項(直径と円周の長さ、円周率の定義、弧度法、円弧の長さ)

1) 円周の長さと円の直径の比率は円の大きさにかかわらず一定です(相似形)。その比率を円周率と呼び、\( \pi \)と書きます。

2) 角度は、半径1の円(単位円と呼ぶ)の円周の長さで表現できます。この角度の表現方法を弧度法とよび、[rad](ラジアン)という単位で記載します。以後特に断らずに、角度は全てradで表します。なお一周(360°)は\( 2 \pi \)[rad]となります。

3) 上記の性質より、半径 \(r\)、角度\( \theta \)の円弧の長さは、\(r \theta \)となります。また、円周の長さは一周=\(2 \pi\)[rad]なので、\(2 \pi r \) となります。


あと、球の話に進むとき、正弦(sin)余弦(cos)の定義が必要になりますが、必要があれば、出てきたところで補足説明をします(単位円を用いた、高校流の理解で十分です。対面授業では、念のため一応その復習も入れます)。


7-2. 円の面積

円を小さな図形に分割し、小さな図形の面積を無限に加えて、円の面積を求めます。小さな図形に分割する方法は、ちょうど「スライスやみじん切り」するような感覚でイメージすると良いと思います。みじん切りの切り方は、何種類もありますが、どの方法で切っても、全部寄せ集めれば、元に戻ります。

1つの方法は、まず1方向(仮に\(x\) 方向に)スライスしていきます。その幅を\(dx\)と置くと、スライスされた円の各部分は様々な長さになります。原点を中心とした半径\(R\)の円は、\( x^2+y^2=R^2 \)ですから、\(y=±\sqrt{R^2-x^2 } \) となり、スライスの長さは\(2\sqrt{R^2-x^2 } \)となります。これを\(x=-R~R\)の範囲で加えればよいので、\( \displaystyle \int_{-R}^{R}{2\sqrt{R^2-x^2 } dx}\)を計算すれば答えは出ます(ということで、対面授業では、ついでに前回尻切れトンボになっていた、wxMaximaを使った具体的な、この積分計算も、紹介・体験していただこうと思っています。答えは簡単に出ます)。なお.... 手で計算する場合には、この関数の積分の計算はちょっとした技巧(三角関数を利用した置換積分)が必要になります。理系大学1年生用の微積分学の教科書参考書などには、この計算方法が紹介されている場合が多いですので、一応紹介しますが、面倒なのでこの方法は理解しなくてもよいです(^^;(後で簡単な解法も紹介しますので)

\[ \int_{-R}^{R} 2 \sqrt{R^2-x^2}dx\] ここで、\(x = R \sin(u)\) とおきます。逆に言えば\(u=\sin^{-1} \frac{x}{R} \) と置くと(置換積分)、区間\(x=-R~R\)は、区間\(u=-\frac{\pi}{2} ~ \frac{\pi}{2} \)となり、また、sin関数の微分の公式より\( \displaystyle \frac{dx}{du}=R\cos(u)\)なので、\(dx= R \cos(u) du\)ですから、これらを与式に代入すると、、 \[ 2\int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \sqrt{R^2-R^2 \sin^2(u)} R\cos(u) du\\ =2\int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} R \sqrt{1-\sin^2(u)} R\cos(u) du\\ =2R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \sqrt{1-\sin^2(u)} \cos(u) du\\ =2R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \sqrt{\cos^2(u)} \cos(u) du\\ =2R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \cos(u)\cos(u) du\\ =2R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \cos^2(u) du\\ \] ここで、三角関数の加法定理\( \cos(a+b)=\cos(a)\cos(b)-\sin(a)\sin(b) \)を思い出し、\(a,b\)が共に\(u\)の時には、\(\cos (2u) = \cos^2 (u) - \sin^2 (u) \)、また\( \sin^2 (u) = 1-\cos^2 (u)\)なので、\( \cos (2u) = 2 \cos(u)-1 \)、つまり\( \cos^2(u) =\frac{1}{2} \{ 1+\cos(2x) \} \)なので(つまり半角の公式(^^;)、これを代入すると、 \[ = 2 R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} \frac{1}{2}\{1+\cos(2u)\} du \\ = R^2 \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} \{1+\cos(2u)\} du \\ = R^2 \{ \pi + \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} \cos(2u) du \} \\ = R^2 \{ \pi + [\frac{1}{2} \sin(2u) ]_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} \} \\ = R^2 \{ \pi +0-0\} \\ = \pi R^2 \] この方法は、考え方は単純ですが、計算が(置換積分法と三角関数の半角の公式を使い)面倒ですね(^^;;

そこで、ここでは、切り方をちょっと(工夫して)変えてみましょう。「バームクーヘン」をイメージしてください。円を、無限に薄い皮が無限に積み重なったバームクーヘンと考え、1枚の皮(を上から見た)の面積を求め、それを無限に足し合わせて、円の面積を求めてみます。

半径\(r\)のバームクーヘンの皮の流さは \(2\pi r\) になります。皮の厚さを\(dr\)とおきます(無限小の厚さ)。すると、1枚の円周形の皮の(上から見た)面積は、\(2 \pi r dr\)になります。このバームクーヘンの皮を、原点から半径\(R\)まで、加えれば、半径\(R\)の円の面積になるはずです。式で書くと\(\displaystyle \int_{0}^{R} {2 \pi r dr}\) となります。これは....簡単に積分でき、 \( \pi R^2 \) となります。

つまり半径\(R\)の円の面積は\( \pi R^2 \) となります。分け方(切り方)を変えるだけで、計算はとても簡単になりますね(^^)

なお対面授業では、もう一つ、小学校で教えている「はず」の方法も簡単に紹介します。ピザパイを半分に切ってからさらに扇型に無限に細かく分割して、それを再度組み合わせ、縦\(R\)横\(\pi R\)の長方形(面積\(\pi R^2\))にする方法です。今の皆さんなら、この小学校で教える「はず」の方法も、実は「定積分」の計算だと理解できると思います。そして、分け方(切り方)を工夫すると、その定積分(足し算)の計算は、小学生でもできる程度、簡単に行うこともできます。

---- 7回目(今回)は、ここまでの予定。以下は教材を提示しますが、予告で、一応8回目(次回)の予定---

7-3. 球の表面積

公式は中学校で教わっていると思いますが、「なぜそうなるのか?」は、多分教わっていないと思います。そういうことに「疑問」を持つことが、学問(勉強)のはじまりです。そこで、同じように、今度は「球の表面積」を求めてみます。これは「リンゴの皮むき」に近いイメージで計算しましょう。立体図形でのイメージが必要となるため、対面授業にて、イメージと具体的な計算方法を紹介します。リンゴの皮むきとの違いは「1周ずつ、ずらさずに帯を切り取る」ことです。上から測った角度を\( \theta\)とし、その微小の変化を\(d \theta \)と書くと、その帯の幅( \(R d\theta \) )が小さいとき、1周の長さ(\(  2 \pi R \sin \theta \))剥いたリンゴの皮の面積は、幅×長さだから、\(2 \pi R \sin \theta R d\theta = 2 \pi R^2 \sin \theta d \theta  \)になります。これを一番上から下まで( \( \theta=0~\pi \) )加えればよいから、\[ \int_0^{\pi} 2 \pi R^2 \sin \theta d\theta \\= 2\pi R^2 ( -\cos(\pi) - -\cos(0) )\\ = 2\pi R^2 2\\ = 4 \pi R^2 \]となります。


7-4. 球の体積

これも、公式は中学校で教わりますが、理由(導出)は教わっていないと思います。そこで今度は「玉ねぎの皮むき(の逆)」のイメージで、厚さ\(dr\)の皮の体積を、中心から半径\(R\)まで加えていきます。

\[ \int_0^R 4\pi r^2 dr = \frac{4}{3}\pi R^3  \]


言葉と式だけだと分かりにくいですね(^^; 対面授業では、空間的なイメージを作りながら、説明します。


ポイントは「定積分とは、無限に細かく分けたものの足し算」と捉えることで、そのようにとらえることにより、デカルト座標(\(x,y\)座標)に拘らず、「柔軟な考え方(切り方)」で式を立てられ、問題の対称性をうまく利用した切り方をすることにより、計算を飛躍的に簡略化して、見通しやすく簡単に答えを求めることができます。


訳もわからず公式を「信じて(洗脳されて?)」覚えて使うのが算数(宗教?)で、そのような公式で求められることを理解する(導出する)のが、論理の学問である「数学」です。

では、今日は、このへんで終わります。