文化学部の中瀬将志講師が執筆した書籍が出版されました
文化学部の中瀬将志講師(日本古典文学)が執筆した書籍『連環する歴史物語 叙述方法と成立環境』が2026年1月に出版されました。著作について著者自身に語ってもらいました。ぜひご覧ください。

書籍名 連環する歴史物語 叙述方法と成立環境
著者名 中瀬将志
判型 308ページ、A5判
出版社 花鳥社
発行日 2026年1月
ISBN 9784868030287
著者自らが語る著作の紹介
歴史書は漢文で記されることが当たり前だった時代に、どういうわけか仮名文で書かれた歴史叙述(歴史物語)が成立しました。『栄花物語』という作品で、藤原道長の繁栄ぶりを中心に平安時代の様々な出来事が描かれています。『栄花物語』の後には、『大鏡』『今鏡』という作品も成立します。やや細かくなりますが、『栄花物語』正編→『大鏡』→『栄花物語』続編→『大鏡』後日物語→『今鏡』の順に成立したと推定されています。各作品は、先行する作品を継承しつつ乗り越えることを繰り返し、総体として一つの大きな流れ(平安時代史)を形成しています。そうした歴史物語のあり方を「連環体」と言い表したのが、恩師の福長進先生です(『歴史物語の創造』『王朝歴史物語史の構想と展望』参照)。本書は、師の驥尾に付して、歴史物語相互の関係性や歴史物語と他のジャンルの作品の関係性について考察したものです。
本書第Ⅰ部「『大鏡』の思想基盤と成立環境」では、『大鏡』の叙述の思想的背景および、『大鏡』の成立に関与した人々の政治的立場について論じました。一般に、ある人物や出来事について記述する際には、書き手のバイアスがかかります。また、何を記し、記さないかという点にも、書き手の立場があらわれます。『大鏡』の成立の背景には、どのような思想や言説、人間関係があったのでしょうか。
第Ⅱ部「『栄花物語』続編から『今鏡』へ」では、『栄花物語』続編の叙述方法および、『栄花物語』続編・『大鏡』後日物語・『今鏡』の関係性について論じました。『栄花物語』続編は、道長亡き後の貴族社会の動向を、道長の子孫に寄り添う立場から記しています。また、『今鏡』は、摂関政治から院政へという政治体制の変革期を叙述の対象としています。従来のあり方から変化していく社会の様相を、各作品はどのように描いているのでしょうか。そして、それぞれの作品の叙述や成立環境は、いかに連環し、断絶しているのでしょうか。
いわゆる専門書に分類される本ですので、読みやすくはないと思いますが、関心をもたれた方はぜひご一読ください。永国寺図書館に所蔵されています。
(紹介文執筆者:中瀬将志 2026年3月)
目次
凡例
序
第Ⅰ部 『大鏡』の思想基盤と成立環境
第一章 藤原道長の人物造型
第二章 菅原道真の人物造型
第三章 花山院・花山朝の位置づけ
第四章 花山院・花山朝の位置づけ追考
第五章 「源氏の栄え」について
第六章 東宮退位の記憶
付章 実仁親王の周辺
第Ⅱ部 『栄花物語』続編から『今鏡』へ
第一章 『栄花物語』の「例」
第二章 閑院流と御堂流
第三章 源基子と桐壺更衣
第四章 『栄花物語』巻第四十攷
第五章 『大鏡』後日物語攷
第六章 媞子内親王・令子内親王と歴史物語
第七章 『栄花物語』続編と『今鏡』
初出一覧
あとがき
索引(人名・書名)
研究者情報
文化学部 中瀬将志 講師

