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【開催報告】連続講座「地域共生社会を支援する」第3回(令和6年3月16日)
本学は、「高知型地域共生社会」を支援する取り組みの一環として、地域共生社会を推進する方々を講師に招き、高知県内外の先進的な取り組みについて幅広い層の方々に知っていただくことを目的に、全3回の連続講座を企画しました。県全体でもそれぞれの地域でも、専門職やサービス資源の限界が見える中、本学は、これまであまり意識されてこなかった、地域にある資源や地域の持つ力に注目し、それらの実効性を科学的に検証・評価していく試みをスタートさせました。
高知県立大学連続講座「地域共生社会を支援する」第3回(令和6年3月16日)
連続講座最終回である第3回講座は、西智弘先生(川崎市立井田病院医師・一般社団法人プラスケア代表理事)を講師にお招きし、永国寺キャンパスにて、対面・オンラインのハイブリッド形式で開催しました。
第1部の基調講演「社会的処方 まちとのつながりで人が元気になる方法」で、西先生は「社会的処方とは、薬で人を健康にするのではなく、地域のつながりを利用して人を元気にする仕組み」と紹介されました。そして「孤独や社会的孤立の改善、不安や抑うつの軽減、自己効力感の向上、救急の利用や病院への紹介の減少、医療コストの削減に効果があると、研究で明らかになっています」と説明されました。
社会的処方をいかに実現するかに話を展開し、客観的な状況と主観的な想いや願いがずれることで生じる苦しみを解消することができる「ケア」に触れ、「人の苦しみをケアの力によってなくすことは、誰にでもできることなのです」と呼びかけました。
西先生が社会的処方の要と考えるのが、医療者等の専門職とコミュニティグループをつなぐ「リンクワーカー」。発祥の地イギリスでは、すでに3500人がリンクワーカーの専門職として活動していることに触れつつ、「しかし、日本は制度を取り入れるのではなく、社会的処方を文化にすることを優先しなければいけないと考えます」と言い添えました。そして、孤立・孤独対策に一部の人が専門的に取り組むのではなく、地域のさまざまな人たちが自分たちのできることを持ち寄って「リンクワーカー」のように関わり、つながりの絆づくりを進めていくというのが、社会的処方のあるべき姿であること、必要なのは、支援者自身が孤立しないように、支援者のネットワークや支援者を支援する仕組みを整備することであると強調されました。
「社会的処方は孤立を解消し、健康度向上と医療費削減に寄与する可能性があります。そのためにも、橋渡しをするリンクワーカー的役割を果たす機能が各地域に必要です」と講演を締めくくられました。
第2部のシンポジウム「市民がつながる地域共生社会」では、最初に2名の登壇者に高知県内での活動事例を紹介していただきました。
池香氏(高知県高岡郡津野町地域包括支援センター保健師)は、「『もうちょっと居ろうや津野町』を目指して」と題し、集落が点在している中山間地域において、保健福祉サービスが十分ではない中で、高齢者が元気に暮らせるような集いの場づくりに取り組まれてきたことや住民の方々の反応、高知県立大学との連携について発表されました。
続いて、西本久美香氏(特定非営利活動法人ふくしねっとCoCoてらす事務局長)は、「土佐清水市で暮らし続けていくために」と題し、人口減少や保健福祉サービスの担い手不足という地域の課題解決に向けて住民主体で行ってきた様々な取り組み、ボランティアの方々が無理なく活動できる仕組みとネットワークづくり、今後の取り組みなどについて紹介されました。
お二人のお話を受けた意見交換会(進行:本学看護学部・小林秀行准教授)では、西先生の発表で示された社会的処方の活動の大きな柱「人を中心とした」「人の力を引き出す」という点が、津野町や土佐清水市の取り組みの中にも見られており、既に県内において社会的処方の活動が始まっていることを確認しました。続いて、西先生よりそれぞれの活動についての評価やアドバイスをいただきました。また、高知県の今後の取り組みについて、「地域で育ってきた人たちがどのような思いを持って暮らしているのか、地域で何をしたいのか、聞いていくことが第一です。対話ありきで、そこから何かが生まれてくる」とのメッセージもいただきました。
最後に本学・甲田茂樹学長より、3回にわたって開催された社会的処方に関する連続講座の総括と、聴講された方々への感謝が述べられました。また、本学は県内自治体ならびに地域で活動される方々と社会的処方の観点からの連携を深め、全学を挙げた10年戦略プロジェクト「リ・デザイン」の一環として地域共生社会の推進を目指した研究と学術的取り組みを進めていく本学の方針が示されました。
ご来場いただいた方々に心よりお礼申し上げます。
当日の様子
学長挨拶
第1部 基調講演「社会的処方:まちとのつながりで人が元気になる方法」
西 智弘 先生(川崎市立井田病院・医師、一般社団法人プラスケア代表理事)
第2部 シンポジウム「市民がつながる地域共生社会」
県内での取り組み発表(1) 池 香 氏(津野町地域包括支援センター 保健師)
県内での取り組み発表(2) 西本 久美香 氏(特定非営利活動法人ふくしねっとCoCoてらす 事務局長)
意見交換会