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【日時】令和6年7月30日(火曜日)18時30分~20時30分
【方法】Web会議システム
【参加者】修了生2名、大学院生3名、教員5名
家族看護学領域では第3回リカレントとして事例検討会を行いました。
今回は、感染症により脳死状態となった子どもとその家族の支援について検討しました。検討したケースは、これまで元気に過ごしてきた3歳の子どもが感染症により生命危機状態となり、治療に加えて、臓器提供についても意思決定が必要となっているケースでした。
はじめに家族の病気体験について検討しました。予期せぬ子どもの生命危機に直面し父親は、子どもにとって何がよいか、移植を待つ他の子どもの中で生き続ける選択肢もあるのではないかと臓器提供の可能性を模索していました。一方、母親は、子どもが生命危機となった原因探しで、罪責感に苛まれていること、臓器提供がさらに子どもに身体的侵襲を加えるのではないかという脅威となっていました。きょうだい児は、両親の普段と違う感情表現などから、何が起きているのか、これから何が起きるのかわからない不安、恐怖を抱えていることが考えられました。このように家族員それぞれに反応を示している状況で、子どもの治療をいつまで続けるのか、臓器提供に伴う治療の差し控えなど家族で話し合うことは困難となっていました。母親は看護師に元の家族の雰囲気に戻りたいと訴えており、子どもの生命危機によって、家族の日常的な生活が失われるとともに、家族の関係性も軋轢や葛藤などが生じて変化していることがさらに家族のストレスとなっていると考えられました。
家族への支援の検討では、子どもの死が避けられない状況で、元の家族の雰囲気を取り戻すことを目指した支援について話し合いました。具体的には、まず、家族の苦悩の緩和を図ることが挙げられました。母親と父親の臓器提供に対する利点や欠点の見立て、何を優先して決めるかの優先度が異なるために話し合いが進まず、かつ互いが感情を伝え合う、表出することが難しく両親間で合意の形成が進んでいませんでした。そのため、看護師は父親、母親それぞれが感情を表出できる機会をもち親のありのままの感情を受け止め、父親、母親それぞれの鬱憤の蓄積を小さくすることが挙げられました。その上で、治療の選択肢とその選択をしたことによる利点と欠点をふまえて家族が話し合えるように現状と、少し先の状況を見越した情報を提供することが挙げられました。臓器提供については一定の時間制限の中での判断が必要となりますが、これからも家族が家族らしく生きていくために家族の合意点を見出しながら段階的に合意形成することが挙げられました。きょうだい児については、きょうだい児の心理的ストレスを考慮し、子どもの情報をどこまで伝えるか両親の見解の一致をみながら子どもときょうだい児が触れ合う機会とその方法を検討していくことが挙がりました。
今回のリカレントでは、事例検討で家族員が生命危機にある家族の体験と家族の体験に基づく具体的な支援を検討することによって、検討内容を参加者がそれぞれの実践で活用していただくことを期待しています。
【日時】令和6年5月28日(火曜日)18時30分~20時30分
【方法】Web会議システム
【参加者】修了生3名、大学院生2名、教員5名
家族看護学領域では修了生の継続学習の機会としてリカレント教育を行っています。今年度、第1回目は事例検討会を行いました。
今回は、がんターミナル期にある療養者とその家族の在宅ケアに関する事例でした。介護者である妻は、ケアには参加しないが訪問看護師のケアの様子を突如、写真撮影する行動や、情緒不安定な様子があり、そのため、看護師は家族の介護や看取りの準備性を把握することに困難を感じていました。まず、看護師にとって不可解とも言える妻の言動の背景を推察しました。1つ目は、看護師が、瘻孔管理や夫の体調判断などのケアに一緒に参画することを促しても拒否的な反応を示すにも関わらず、看護師がケアを実施している様子を突如、撮影する行動について考えました。これまで、瘻孔に対して“怖い”という感情が先立ち、また療養者である夫が病状的にも可能であったことから、瘻孔管理については夫自身で行ってきたため、妻が直接関与する機会がなかったことが考えられました。しかし、病状進行に伴い夫が自身で管理ができなくなってきた状況で、看護師からの促しを拒否する行動は、そのような負の感情から距離を置く対処である一方で、瘻孔管理をしない自身への自責感、夫の役に立ちたいというニーズが交錯していることが推測されました。2つ目は、看護師が妻のことを思い発する言葉に妻が抵抗を示し情緒的に不安定となり妻への関わりが難しくなっている背景について検討しました。夫が妻の感情を察して医療者に伝える様子や、妻が夫の前でも自身の感情を表出している様子から、その時々で感情を共有することのできる夫婦と捉えられました。しかし、夫婦間で死別を見据えた対話がされている様子はなく、互いが気になっているものの話し合えないことや親族と分かち合えないことの鬱積、今後の療養生活の準備が滞っていることなどが、妻の情緒の不安定さに影響していると考えられました。
検討内容から、家族への介入として夫のために妻なりに工夫して療養を支えてきた努力を承認すること、妻の“知りたい”ことを中心としたケアの情報提供、現在、将来的な療養法について残される妻と生き抜く夫の双方の折り合い処を見出すことを目的とした話し合いの機会をもつことなどの介入が挙げられました。
このように家族看護学領域では療養者とその家族のケアについて、検討しています。今後も、実践したケアの意味を振り返りつつ、次のケアを見据える機会としてリカレント教育を活用していただければと思います。
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