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3.11 被災地の祭り/変身の時空/型と型破りと
連続講座「神祭の芸能」もいよいよ最終回。この日は、東日本大震災からちょうど6年目を迎えた3月11日でした。
講義の始まりは、宮城県石巻市雄勝町・名振地区の秋葉神社祭礼が、震災の翌年に行われたという話からでした。当時は日本中が「自粛」ムード。その中で、震災の翌年以降、被災地では次々に祭りと芸能が復興し、コミュニティ再建の精神的支柱として大きな役割を果たしていました。供養(鎮魂)と開放(喜び・楽しみ)は、祭りの原点でもあります。
戦時中の佐喜浜俄では、都会の演劇が統制をしかれて自粛する中で、奔放に本音を言えた(俄だから言えた)そうです。当時の台本には、現代人なら「言ったらあぶないのでは…」と思うようなせりふが数多く残されていますが、実際に警察が来るようなことはありませんでした。地域社会は、自粛や統制とは離れた「あぶなくない」場所であるといえます。
地域社会の祭りと芸能とは元来、神への饗応、神を喜ばせる行為でした。身体から身体へと受け渡して、受け継がれていくもので、型を身につけ、型からはずれる自由度を有するもの。型とは「この通りにしろ」ではなく、「これはしてはいけない」ということを伝えるためのもの。型を知っている者だけが「型破り」を体現できる…というお話で今回の連続講座は終幕となりました。
今回の8回連続講座には、延べ400名というたくさんの方にご来場いただきました。誠にありがとうございました。