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第5回越境シリーズ講座では、Future Earth(持続可能な地球社会の実現をめざす国際協働研究プラットフォーム)をテーマに、日本ハブ事務局長であり、本学理事でもある、春日文子先生による講演会が、6月24日(月曜日)、本学池キャンパスにおいて、永国寺キャンパスとテレビ会議で結んで開催されました。
Future Earthでは、地球規模の持続可能性を実現するため、自然科学、社会科学、工学、人文学などの学術分野の垣根をこえ、学術と社会の間の垣根をこえる「超学際」Transdisciplinarityが謳われ、研究活動に専門家と社会のステークホルダー(関係者)が協働して研究活動の設計Co-designや研究知見の創出Co-productionを行うことが提案されています。
春日先生のご講演では、まず、地球温暖化の現状について、気候変動に関する世界の現状を研究論文などからダイナミックなグラフなどで示され、熱帯雨林がサバンナになったり、人間が住むことができる場所が急速に減少し、作物の栄養分が変わっていき、人間は気象難民となり人工的な場所にしか住めなくなるかもしれないことや、昨年の西日本豪雨も気候変動の影響であることなども話されました。さらに、ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))の観点から企業の成長例の説明などを含め、それぞれが深めている研究を、分野を超えてどのように社会に活かせるかを考えることが大事であることを述べられました。
また、現在、研究と社会実践や政策の連携を強めるために、分野別の「知と実践のためのネットワーク Knowledge Activity Network( KAN )」を構築している取り組みとして、異分野の研究者同士のつながりだけでなく、地球システム研究者と金融業界のビジネスマンとのワークショップなど、関連が薄い業種との関連イベントを開催していることなどの話があり、去る5月21日には、台北にて健康に関する(Health KAN) の設立会議が行われ、本学看護学研究科の神原教授が出席したことも報告してくださいました。
気候変動に関する科学者の常識が社会に伝えきれていないことから、オブラートに包んでアピールするのではなく、ストレートな表現でアピールする必要性を感じたことなど、社会への情報発信についても示唆を頂きました。
質疑応答では、いかに身近に感じて取り組むことができるのか、主に大学での役割として、学生の授業、活動としてできることは何かなどについて、議論がありました。
これらの話から、いかに地球市民と持続可能な社会課題の解決のために対話するか、特にリスクコミュニケーションして、リスク削減や地球の変化に対する適応しうる健康行動を取ることが現在大きな課題となっている中で、人間科学としての、看護、福祉、健康栄養、文化の立場から、この議論に参加することは非常に重要であり、さらに先進国日本の中で、人口・災害・健康リスクを含む社会課題を多く持つ本学が考え続けていかなければならないテーマであると考えられました。
本学の教職員にとって大変良い刺激となり、新たなイノベーション創出となる萌芽になったことと思います。また、当日は多くの研究科院生が出席しており、今後の研究活動に向けての大きな刺激を与えて頂けたと思います。
春日文子先生、ありがとうございました。
春日文子(かすが ふみこ)先生のご紹介
東京大学大学院農学系研究科修了後、国立予防衛生研究所(現、国立感染症研究所)へ入所。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を経て、2016年より国立環境研究所の特任フェロー。地球社会の持続可能性に関する研究プログラムである「FutureEarth」の国際本部事務局日本ハブディレクター。日本学術会議連携会員。専門 環境学、健康・生活科学。