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職位 | 講師 | |
役職 | ||
所属 | 文化学部 文化学科 | |
教員紹介 | 国家は刑事法を用いて社会の秩序維持を図ります。刑法は「ある行為をしてはならない」もしくは「ある行為をせよ」という規範を市民に示すことによって市民の法益を守ります。そして、これらの規範に違反したと思われる人物を刑事訴訟法に規定された手続に従って、「捜査→逮捕→取調その他→公訴提起(起訴)→裁判→判決→有罪かつ実刑判決の場合の刑の執行」という過程を経て破られた秩序の回復を行います。このような規範や手続は秩序維持や秩序回復のために用いられるべきものですが、国家権力が濫用し、市民の人権を脅かすという事態が生じる可能性を持つものであることは歴史を振り返ると枚挙に暇がありません。そこで、刑事法の運用を行う国家権力とその運用を監視すべき市民には鋭い人権感覚が要請されます。人権を研究するに当たり、第二次世界大戦後、国際的な人権保障の枠組を無視することはできません。例えば、日本の制度やその運営を日本が批准する人権条約の実施機関である自由権規約人権委員会や女子差別撤廃委員会などで批判されたり、提言を受けたりすることはその一例です。わたしは近代的な人権を生み出したヨーロッパで多くの成果を上げているヨーロッパ人権条約を参考にしながら、日本の刑事司法の在り方を考えていこうとしています。 社会的弱者をどのように処遇するのかはその国の人権水準を考えるうえで大変重要な指標です。ふとしたことがきっかけで精神障害者の処遇に関心を持つようになりました。最初は触法精神障害者の処遇のみに関心がありましたが、現在は自らの意思に沿わない入院を強いられている精神障害者について考えています。「精神障害者」は危険な存在でしょうか。そうだとは思われませんし、統計上もそのようなことを示してはいません。では、何十万人もの人々が入院を強制させられている現行制度は続行すべきでしょうか。そのようなことを考えています。 |
学位 | 法学修士 |
学歴・職歴 |
【学歴】 【職歴】 |
専門分野 | 刑法、国際人権法 |
所属学会 |
日本刑法学会 |
国際人権法から見た日本の精神医療
心神喪失者等医療観察法や精神保健福祉法で認められている患者本人の意思に基づかない精神科病院等への入院について、国際人法の観点から研究しています。また、安楽死のような生命倫理の問題、危険な犯罪者に対する保安監置なども関心があります。
刑法、刑事訴訟法、刑事政策、国際人権法
人権保障、精神障碍者の強制入院
・田中 康代「医療保護入院に関する一考察」、『甲南法学』62巻1・2・3・4号、pp. 99-114 (2022)
・田中 康代:「ドイツにおける保安監置とヨーロッパ人権裁判所」、『法と政治』71巻2号、pp. 399-421 (2020)
・田中 康代:「精神障碍者の保護施設への強制収用に関するヨーロッパ人権裁判所の判例」、『社会科学論集』111号、pp. 59-70 (2019)
・田中 康代:「精神科病院への非自発的入院に関するヨーロッパ人権裁判所の判例」、『社会科学論集』109・110号、pp. 67-82 (2017)
・田中 康代:「医師の関与を必要とする自殺幇助を求める権利に関するヨーロッパ人権条約の判例紹介」、『社会科学論集』108号、
pp. 59-68 (2016)
・田中 康代:「末期でない人物の安楽死とヨーロッパ人権裁判所」石田 倫識 他、『刑事法学と刑事弁護の協働と展望』、pp. 724-739、現代人文社、東京(2020)