本文
博士論文一覧 | 健康生活科学研究科健康生活科学専攻(博士後期課程)
平成27年度 博士論文一覧
氏名 | 論文タイトル | 主指導教員 |
---|---|---|
伊藤 由里子 | 地域で生活する胃全摘体験者の経験の意味とプロセス | 藤田 佐和 |
[修了者の声] 健康生活科学研究科(博士後期課程)社会福祉学領域 山村 靖彦(平成23年度修了)
私は、かつて九州の小さな町の社会福祉協議会で、福祉サービス実施の担当をしていました。そこでの悩みの一つに、住民参加によるサービスの実践が地域によってうまくいったり、また逆に滞ったりするのはなぜかということがありました。そのような時に出会ったのが、アメリカの政治学者パットナムによるソーシャル・キャピタルという概念でした。ソーシャル・キャピタルとは、人々がもつ人間関係や信頼関係のことをいい、彼はイタリアを例に、その厚薄や蓄積が民主政治にも影響を及ぼすことを明らかにしました。
今回の研究では、E地域16地区の70歳以上全531名を対象に、ソーシャル・キャピタルに関するアンケート調査と、地区ごとに開催される「高齢者ふれあい・いきいきサロン」への参加率と開催にあたっての困難度等について3ヶ年の調査を行いました。
その結果、ここでのソーシャル・キャピタルは、サロンの参加率や参加者による自主的な運営に大きく影響を及ぼすことがわかりました。さらに、サロンの運営に対して支援を行うことにより、参加者のソーシャル・キャピタルが醸成されることも明らかとなました。このことから、本研究ではサロンの自主運営の継続が可能となるための支援の指標を、地区のソーシャル・キャピタルの状況をもとに導き出しました。
サロンへの支援に関する研究が少ない中、本研究では地域のソーシャル・キャピタルに着目することで、その地域に適した支援が可能になることが示唆されました。今後、ソーシャル・キャピタル論のさらなる追究を通して、その方法論を確立していくことが本研究に残された課題といえます。
最後に、健康生活科学研究科は私のように遠方にいる者でも、不安なく研究に取り組める環境にありました。熱心に指導して下さった先生方をはじめ、いつも丁寧な対応をして下さった職員の方々による豊かなソーシャル・キャピタルによって本研究は支えられてきたと思っています。