「あとから来る者のために」
あとから来る者のために
田畑を耕し
種を用意しておくのだ
山を
川を
海を
きれいにしておくのだ
ああ
あとからくる者のために
苦労をし
我慢をし
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
みなそれぞれ自分にできる
なにかをしてゆくのだ
(坂村真民「あとから来る者のために」、
西澤孝一(2017)『かなしみをあたためあってあるいてゆこう』、致知出版社より)
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の話をしているとき、ある先生に、この坂村真民さんの詩を紹介してもらいました。そのときに感じたのは筆者の力強い決意であり、筆者の想いに共感しました。私たちは、次代を担っていく方たちのため、持続可能な世界の実現のため、私たち一人ひとりが何を成すべきかを、「自分事」として真剣に考えなければならないと思います。
高知県立大学は、1945年に創設された高知県立女子医学専門学校を源流とし、75年の歴史を重ねています。この学び舎に集う学生たちは学びにあこがれ、教員たちは高い志を持って教育研究に取り組み、職員たちは学生や教員たちを支えてきました。その中で、「学生中心の教育」「一人ひとりの学生が自己実現するための教育」「地域志向の教育」という伝統を育んできたのです。
一方で、課題先進県の高知県にあって、創基当初から地域課題の解決に努力してきました。第二次世界大戦の戦禍、昭和南海地震や毎年のように襲ってくる台風の被害、男女共同参画社会の実現、子どもたちの貧困、中山間地域の深刻な過疎化、高齢者の孤立、そして人口減少…。近年は、災害看護や地球規模の環境問題、マイノリティの教育問題といったグローバルな視点での研究や、課題解決に向けて現地で活動する教員や大学院生もいます。
すべての教職員が、県立大学としての使命を自覚し、時代や地域をこえて、これらの課題に立ち向かってきました。教職員だけではなく、学生も同志となって、例えば立志社中のように、地域課題の解決に主体的に取り組む学生たちも少なくありません。学生たちは、自分が生まれ育った場所でなくても、自分のふるさとと同じように地域を想い、奮闘しています。
このような営みの中で、平和を愛し、一人ひとりを大切にするという理念のもとに「女子大DNA」と呼ばれるレガシーを培ってきました。それは、誰一人取り残さないための、次世代に大切なことをつなぐための考え方や知識、技術です。
いま、SDGsの17のゴールと169のターゲットを見るとき、私たちの先達が培ってきたレガシーが、SDGsの取り組みと多くの点で共通していることを改めて認識しています。そして、私たちはSDGsの達成のために、地域と連携し、世界の人々と共に歩むことができると確信しております。
高知県立大学は、教育、研究、社会連携を通じて、SDGsの達成に向けて取り組んでまいります。
令和2年4月21日 創立記念日
高知県公立大学法人高知県立大学
学長 野嶋 佐由美
SDGsの趣旨は、本学の理念と一致するものです。本学の歴史やレガシーを受け継ぎつつ、SDGsの達成に向けて、次の取り組みから行動を始めます。そして、2030年の達成に向けて進化していきます。
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。
(外務省HP https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html より。)