高度実践看護師コース－慢性看護学

慢性看護学－高度実践看護師コース[博士前期課程]

慢性病者とその家族が慢性病とともに自分らしい生活・人生を過ごせるよう、慢性看護のケアシステムを変革する

　慢性看護の考え方は、1980 年代以降の米国における慢性病者とその家族の体験に関する研究の蓄積によって発展しました。しかしながら、看護研究文献や臨床現場の声から、入退院の繰り返しなどへの有効な支援ができないといった課題が継続して聞かれます。慢性疾患を取り巻く現状を府徹すると、医療費は年々増大する一方、入院期間は短縮化し地域包括ケアが推進されるなど、慢性病者へのセルフマネジメント教育や重症化予防医療は転換期を迎えており、慢性看護の考え方やケア・システムは見直す必要に迫られています。
　欧米でも政府財政を圧迫する医療費増大の一方で患者らのケア満足度の低下が重要な課題として取り組まれ、2000年以降、各国・地域それぞれでケア・システム変革が推進されてきました。
慢性看護学領域では、こうした国内外の慢性病の治療・ケアに伴う問題を踏まえ、慢性病者とその家族が慢性病とともに自分らしい生活・人生を築けるよう、専門看護師による支援方法の開発及びケア・システム変革の推進を目指しています。専門看護師は、慢性病者・家族の人生経験と価値観を理解した上で、病気とそれに伴う様々な課題への対処を直接的かつ間接的に支援しなければなりません。そのため、大学院では理論や研究成果を活用して多角的な視点から現象を理解し、ホリスティックなケア、及びケアシステムを創造する力を養っていきます。
　特に、病みの軌跡という視点から慢性病者の現在 - 過去‐未来を理解し、個々の専門（サブスペシャリティ）において、生活の自律的な再編成を直接的・間接的に支援する方策を考案していただきます。従来の急性期医療システムが慢性看護ケアに及ぼす負の影響を改善するのに必要な、慢性看護の多彩なケアシステム事例を学びます。また、成人学習理論（アンドラゴジー）や生涯発達の視点から、慢性病者の人生経験を尊重した成人学習支援を効果的に行うための方法を訓練します。さらに、臨床と地域における多機関・多職種が連携・協働できるようにチームアプローチのコーディネーター・スキルも訓練します。

カリキュラム

修了生の活躍

　修了生は、慢性疾患看護専門看護師や大学教員としてさまざまな場で活躍しています。看護実践の場では、慢性病者とその家族の人生の伴走者として、治療・ケアやセルフマネジメントの方向性を共同意思決定するなかで、大学院での学びや課題が、自身の成長や看護観の変化につながっていることに気づきを得ています。慢性病者とその家族にとっての最良の生活・人生とはどういうことなのか、臨床・教育・研究の分野でその意味を探求し続けておられます。

受験生の皆様へ

　慢性看護学領域では、慢性病者の体験を人生という時間軸と暮しという空間軸からホリスティックに理解することを重視します。病を得て苦悩し成長する人間の潜在力と心身の巧妙な相互関係について理解を深め、これらを効果的に応用した心理社会的ケアのおもしろさを一緒に探究しましょう。
　また、慢性看護実践に関心をもつ看護職を対象に、リカレント教育やケア検討会を実施しています。事例検討では、現場で遭遇しやすい事例について理論・概念を活用した援助方法の検討や有用な理論・概念のミニ講義など、看護実践に活用できる研修会を企画しています。修了生をはじめ、県内外の看護職・医療職と共に、慢性病者とその家族が自分らしい生活を築くための援助を検討する議論の輪を拡大することで、県内の慢性看護の質向上にも取り組んでいます。慢性看護学に少しでも興味・関心がある方は、お気軽にご相談ください。

研究テーマ

・ 高知県血管病ハイリスク群への重症化予防/慢性病の看護ケアシステムに関する研究
・ 慢性疾患看護専門看護師の卓越した実践に関する研究
・ 2型/1型糖尿病/血液透析患者の病い体験/病みの軌跡/ACPに関する研究
・ 2型/1型糖尿病/心疾患患者の教育プログラムに関する研究
・ 2型糖尿病・足病変/心不全患者のセルフモニタリング/セルフマネジメントに関する研究
・ 2型糖尿病/心不全の多職種チーム・アプローチに関する研究

慢性看護学領域に関するお問い合わせは、下記へご連絡下さい。

高知県立大学看護学研究科博士前期課程
慢性看護学　教授　内田　雅子
〒781-8515　高知県高知市池2751-1
Tel：088-847-8720
e-mail：uchida@cc.u-kochi.ac.jp